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宿毛平野
【すくもへいや】


県西部,松田川下流域にある平野。この平野の基盤岩石は各所に断層が走り,複雑な構造をなしている。宿毛市片島北部の新城山(302.8m)から中村市具同の高森山(331m)を結ぶ低山性の山列南縁を走る国見断層,その南部の貝ケ森(454.6m)山地の北縁を走る江ノ村断層がともにほぼ東西に走っている。この両断層の間に宿毛湾から幡多郡大方町南部に至る中筋地溝帯があり,地溝帯内を南北にいくつかの断層が横切っている。基盤岩石も,宿毛と南部の小深浦を結ぶ線以西は白亜紀四万十川層群,東側は第三紀漸新世平田層で構成され,その上に沖積層が分布する。地溝帯の西部,宿毛市押ノ川付近にある市山峠(48m)が,松田川と中筋川の分水嶺をなしている。平野はこの分水嶺から宿毛湾に至る中筋地溝帯西端の,松田川下流域に分布する沖積平地で,上流からの肥沃な土壌の堆積がみられる。気候は穏やかで年平均気温は16.8℃,最寒月の1~2月平均気温6.8℃,年降水量は2,100mm前後で,中村平野の2,800mm前後に比べるとかなり少ない。平野の西部は明治20年宿毛~片島間に堤防を築いて新田を開発するまでは浅い海で,北西部の台地端には宿毛貝塚がある。このほか,平野には縄文時代から弥生時代にかけての遺跡分布がみられる。肥沃な沖積平地は古くから農耕が行われ,近世初頭,すでに松田川に堰を造り,用水の利用があった。さらに万治元年土佐藩奉行野中兼山の指揮で,宿毛に延長2.8km,幅員6~10m,高さ4~6mの大規模な堤防を築き,堰を改築して,水田270haの灌漑や新田の開発を行い,農業生産が進展した。明治20年頃から宿毛~片島間および片島~小深浦間の2か所に堤を築き,宿毛大曲輪以西の新田開発が行われた。農業は一部で野菜・果樹栽培がみられるが,中村平野に属する東部の平田・山田地区とは異なり,ほとんどが水稲の単作地域である。平野の中心,宿毛は山内氏入国以後,土佐藩家老伊賀氏の土居町(小城下町)で,県西部の産業・交通の中心として発展してきた。現在外港の片島~宿毛間を結ぶ県道沿いの新田の一部や沼沢地は埋め立てられ,市街化が進んでいる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7206326