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筑後平野
【ちくごへいや】


九州最大の河川筑後川の中・下流部に広がる平野のうち,県内部分の総称。呼称は県南部の旧国名にちなむ。筑後川下流右岸の佐賀県側の平野を佐賀平野といい,これと合わせて筑紫平野とも呼ぶ。行政区画上は8市7郡(19町)に広がり,耳納(みのう)(水縄)山地西方の狭隘部で二分され,北側を両筑平野,南側を南筑平野と呼ぶ。両筑平野は筑紫野市・甘木市・小郡(おごおり)市,朝倉郡夜須町・三輪町・朝倉町・杷木(はき)町,三井郡大刀洗町・北野町,浮羽郡田主丸町・吉井町・浮羽町に広がり,名称はかつての筑前国・筑後国にまたがることに由来。両筑平野はさらに北野平野と筑後川中流平野に分かれる。北野平野は,筑後川の支流の宝満川・小石原川の流域に広がり,大部分は小石原川と東の佐田川が形成した複合扇状地の小石原川扇状地で,筑後川本流や宝満川との間は小規模な段丘崖をもつ沖積段丘となる。土地利用は,扇頂近くでは大部分が水田,段丘化している扇央・扇端部では畑や果樹園が多く,キリンビールやブリヂストンタイヤなどの工場用地もある。宝満川は,筑後川の県内最大の支流で,小石原川扇状地の西端を南流。筑後川中流平野は,大分県境の夜明ダムから久留米市付近までを指し,筑後川本流とその南側をほぼ並行して流れる巨瀬(こせ)川の氾濫原が大部分を占める。これらの氾濫原を覆う形で,南の耳納山地の山麓には小規模な崖錐や扇状地が連なるほか,浮羽町の大野原には比高20m前後の河岸段丘がみられる。この段丘は構成する礫層から開析扇状地と推定されるが,筑後川流域では一般に洪積段丘が少なく,県内の筑後川沿いでは唯一のもの。段丘面上は畑と果樹園に利用され,特にナシの産地として知られる。また田主丸町を中心に苗木・植木の園芸が盛ん。南筑平野は久留米市以南を指し,行政上は久留米市・大川市・柳川市・筑後市・八女(やめ)市,三潴(みずま)郡三潴町・城島町・大木町,八女郡広川町・立花町,山門郡大和町・三橋町・瀬高町・山川町,三池郡高田町を含み,南部の柳川市周辺を柳川平野と呼ぶこともある。南筑平野は,筑後川本流および矢部川の沖積平野と洪積台地からなり,沖積平野は非常に低平で,灌漑用と排水用のクリークが縦横に走る特有の景観を呈するが,最近の圃場整備事業によりクリークは整理統合されつつある。この平野は,佐賀平野とともに九州最大の穀倉地帯を形成し,米作のほか裏作として小麦や良質の藺草が栽培される。沖積平野の東側に広がる洪積台地は,3段の段丘に分かれる。高位段丘面は八女市吉田付近に典型的に見られる標高40~70m,比高15~20mの面で,開析が進み平坦面がほとんどない丘陵性の地形。中位段丘面は高位段丘面の周囲にあり,標高25~35mで西に向かって高度を下げ,場所によっては明確な段丘崖をもたずに沖積面下に没する。低位段丘面は筑後市羽犬塚付近から久留米市荒木付近に分布する標高10~20mの段丘面。高位・中位の段丘面は大部分が茶畑で,八女茶の産地,低位段丘面は畑・果樹園となる。南筑平野の南西部は有明海に面し,江戸期以降干拓が行われ,大半が水田となる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7212665