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塩田川
【しおたがわ】


塩田川水系で,岩谷川内川や吉田川などをはじめ,大小21の支流を持つ。藤津郡嬉野(うれしの)町と長崎県との境にある虚空蔵(こくぞう)山(608.5m)付近に源を発し,嬉野町・塩田町を経て,下流部は鹿島市と杵島(きしま)郡有明町の境をなし有明海に注ぐ川。延長26km,流域面積128km(^2),2級河川。「肥前国風土記」の塩田川の項に「郡の北にあり。この川の源は,郡の西南なる託羅(たら)の峰より出で東に流れて海に入る。潮満つ時は逆(さかしま)に流れ,潮の満ち流るる勢大(いた)く高し。因りて潮高満(しおたかみつ)といひき。今,訛りて塩田川といふ」とあり,川名の由来がわかる。当川は満潮時に潮が逆流し,千石船も通行でき,川口から7kmの位置にある塩田は港津として繁栄した。また,天草の陶石はこの川流域の水車を利用して粉砕され,有田・波佐見方面に焼物の原料として供給された。近年は電動粉砕機を用いているが,当川を経由する原料の供給ルートは変わっていない。当川は河道が狭く,上流部は年降水量2,000mmを超す多雨地帯(昭和16~40年平均嬉野2,448mm・多良2,169mm)で,昔から洪水の被害が多かった。河口近くにあった鹿島藩の常広城も,たびたびの水害に文化4年現高津原(たかつばる)(鹿島市)に城を移したほどである(疏導要書)。近年では昭和31・37・45年に,上流の開発も関係して,大洪水に見舞われた。これらの大水害を契機に,拡幅工事・河道変更・ダム建設などを行っている。なお,塩田川の上流部を普通,嬉野川という。この川の流域一帯は嬉野茶(佐賀県内生産の約60%)の産地として有名。また,キリスト教徒弾圧地不動山や「肥前国風土記」にもでている轟の滝などがある。「疏導要書」や「肥前国誌」には嬉野川の名が見られる。嬉野町の温泉街と轟の滝公園を嬉野川沿いに結ぶ遊歩道建設工事が,県の環境整備事業として進行中。また,塩田川の下流部は百貫(ひやつかん)川といわれ,「肥前国誌」に「百貫川 塩田川の下流」とあり,鹿島市と杵島郡有明町の境をなす。川口付近にある有明町大字深浦字百貫は,現在は1小漁港となっている。昭和2年,百貫橋が架けられたので,長崎脇街道といわれた鹿島往還も古渡(ふるわたし)の渡船場を必要としなくなった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7217112