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九十九島
【くじゅうくしま】


佐世保湾口の高後(こうご)崎から北松浦郡小佐々町を経て,同郡鹿町町の江迎湾に至る約25kmの沿岸に分布する大小170余の島嶼群。西海国立公園の一部をなす。北松浦半島一帯は第三紀層の堆積後,西へ傾き浸食され平坦面ができ,その後玄武岩の流出があり,溶岩台地が形成された。その台地面が開析され複雑な起伏を持つようになり,その後の沈降によりかつての浸食谷に海水が浸入,多数の溺れ谷が見られる典型的なリアス式海岸となった。多島密度においては日本有数といわれている。佐世保市の行政区域内の島々を南九十九島,小佐々町・鹿町町に属する島々を北九十九島と呼んでいる。佐々浦以南の島々は小島が多く密度が大きく,内海性であり,最近の隆起により形成された満潮時にも水没しない海食ベンチがよく発達しているのが特色であり,金重(かなしげ)島に百畳敷,長南風(ながはい)島に千畳敷の名前もある。海食崖も金重島,枕島などに見られる。佐々浦以北の島々は面積も比較的に大きく,外洋性の海に臨む島が多い。島々の植物は照葉樹林で,シイ・トベラ・ツバキ・ネム・シャリンバイ・クロキなどが主であり,この緑と島の岩肌が清澄な海水に映り優美な美しさを示している。常住の島は黒島・高島(佐世保市),橋で陸続きになった前島・鼕泊(とうどまり)島(小佐々町)で残りは無人島である。波静かな九十九島の海域には真珠棚,カキ筏,ハマチ・タイなどの養殖生簀が多数見られる。鹿子(かし)前に観光ターミナルビルがあり,九十九島めぐり,西海橋・平戸行定期観光船が発着しており,近くにホテル・国民宿舎・民宿もあり,観光客でにぎわっている。弓張岳(364m),冷水(ひやみず)岳(303m)からの九十九島の夕映えは特に素晴らしい。藩政時代はあまり人々に知られず,平戸八景の中に入ってないが,幕末から明治にかけては,この自然美を詩・歌にしたものが残されている。昭和2年大阪毎日新聞社の新日本百景の第1位に入選して以来,観光地として全国に名前を知られてきたが,南九十九島の海域は第2次大戦前は軍港域に指定されており,要塞取締法の強化とともに観光事業も衰え,秘密のベールに包まれてしまった。戦後,再び観光事業が復活し,平戸・五島とともに昭和30年に西海国立公園の指定を受け脚光を浴びている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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