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鷹島
【たかしま】


伊万里湾口にある島。北松浦郡鷹島町に所属する。面積16.23km(^2),東西約5km・南北約13km。鷹島町の主島で松浦市の北方約9kmに位置する低平な島。標高は南部の牧ノ岳(まきのたけ)117.0m,北部の宮地岳(みやじだけ)116.6mとほとんど変わらず,第三紀砂岩層の基盤に玄武岩の溶岩台地がのっている。人口は約3,700人。集落は北から阿翁在,阿翁浦,日比,里,神崎,石川,中通,殿ノ浦,原,三里,船唐津がある。平坦面は畑地に利用され葉煙草の栽培が盛んである。水田は地下水の得られる傾斜地や谷間に多いが米は不足する。昭和初期には南東部にある神崎半島の黒津浦や裏日比から石炭を産出した。炭坑跡の湧水を現在では上水道の水源に利用している。海岸線は複雑な岩浜で海食崖が多い。中部以北に産出する粘着力に富む玄武岩は墓石材として優れ阿翁石として有名で,現在も阿翁には約50の業者が400年来の伝統を継承して石工業に従事し,県内外を販路として年間約4億円の売上げ実績を示している。産業別人口構成は第1次産業54.7%,第2次産業9.5%,第3次産業35.8%(昭和55年)となっているが,経済的な面からみると島の産業の首位は,280戸の専業漁家が属する阿翁浦漁港を中心とする漁業および各地に見られる養殖業で県下で屈指の実績を上げている。この島は元寇の島としても広く知られ,島内には現在も元寇にまつわる伝承や地名が多い。例えば,開田(ひうきだ)という所では現在も鶏を飼わない。それは元寇の時,鶏が鳴いたため家族7人が皆殺しにされたことに拠るといわれている。特徴的な地名では,首除(くびのき)・伊野利(祈り)の浜・刀の元・供養の元・地獄谷・首崎・血崎・血浦・胴代・鬼塚・遠矢の原など激戦地一帯に残っている。昭和55年8月から始まった文部省委嘱の水中考古学研究班約30人による海底調査・潜水調査と相まって,昭和56年7月末には元寇700年記念祭が町を挙げて開催されたのを機会に,鷹島町立歴史民俗資料館が設置され海底から引き揚げられた元寇遺物など貴重な多くの資料が保存され公開されている。本土との交通は,殿ノ浦港と松浦市今福港を結ぶ大型フェリーが片道40分で1日7往復,日比港と佐賀県肥前町星賀(ほしか)港を結ぶフェリーが片道10分で10往復,阿翁浦港と途中の島を経由して松浦市新御厨港を結ぶフェリーが片道90分で3往復の3路線に就航している。島内には町営バスが常時運行している。近年は観光客も増加し,素朴な人情の島として評価が高い。旅館・民宿などもある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7221481