100辞書・辞典一括検索

JLogos

29

男女群島
【だんじょぐんとう】


福江島大瀬崎の南西約70km,東シナ海にある群島。福江市浜町に所属する。総面積4.5km(^2)。昭和44年8月18日に国天然記念物指定。天然保護区域。長崎半島より南西へ147km,甑(こしき)島より西へ132kmに位置する。北東から南西にかけて並ぶ,男島(おしま),クロキ島,寄島(中ノ島),ハナグリ島,女島(めしま)の5島と,それに伴う岩礁より構成され,男島の北端から女島の南端まで9.7kmある。最大の男島は面積2.81km(^2)で最高地点は217m。女島は面積1.34km(^2)で最高地点は283m。各島とも無人島であるが,女島には海上保安庁福江航路標識事務所の女島灯台があり,係員が常駐している。地質は群島全域が石英角閃石含有複輝石安山岩質溶結凝灰岩で構成されており,その溶結構造は,男島東風泊・真浦・南風泊において顕著である。海岸線は各島とも数mから数十mの海食崖に囲まれ,露出する岩石には柱状節理が発達し,特に女島の東側には200m以上の柱状節理の発達した絶壁がそそり立ち絶景を呈している。周辺の海域はブリ・マダイ・カツオ・マグロなどの好漁場で,五島列島をはじめ県の内外から出漁船が多い。また,サンゴの漁場としても有名であった。植物相は南方系の植物を含みながらも裸子植物・ブナ科・ツツジ科・ハイノキ科を欠き,キク科・マメ科・ラン科が島嶼型の特徴をもつ。森林は男島と女島の山中にみられ,主木はタブノキ・ヤブニッケイ・ショウベンノキで,林下にはオオタニワタリ・クワズイモ・アオノクマタケラン・オオイワヒトデが密生する。植物群落は,海岸の崖地のダルマギク群落,海に面する斜面にはハチジョウススキ群落あるいはコウライシバ群落が発達する。マルバニッケイ群落は海岸最前線の巨大な転礫石の背後に発達,オニヤブソテツ・ツワブキ・ヒゲスゲ・ハマボッスを伴う。海岸斜面の上部にはモクタチバナ群落が発達し,さらに上方にはタブノキ群落が発達する。動物相は,本土系のもののほかに南方系のものが多く,南九州,屋久島地方との類似点が高い。哺乳類はクマネズミ・アカネズミの2種,鳥類はオオミズナギドリやカツオドリが多く,カラスバト(国天然記念物)も生息する。アカヒゲ・アオコッコなどの南方系の鳥もみられる。渡り期の調査では約100種が確認されている。爬虫類ではヤモリ・トカゲがいる。アオウミガメ・タイマイ・オサガメなどウミガメは多いが両生類はいない。陸産貝類は25種が記録されており,そのうち52%が固有種で固有種率は非常に高い。このことは男女群島の孤島化の歴史の長さを物語るものである。このように男女群島は地質・植物・動物ともに群島全体に固有の自然を維持する数少ない地域の1つとして学術上重要である。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7221642