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白川
【しらかわ】


県の北東部から中央部に流れる1級河川。阿蘇カルデラ内の阿蘇郡白水村に発し,同郡久木野村・長陽村,菊池郡大津町・菊陽町を経て熊本市に入り,熊本平野を西流して熊本市沖新町で有明海に注ぐ。流路延長63.2km,支川13を含めた総延長142.6km。流域は偏円形のカルデラを頭部とするオタマジャクシまたは魚のエイの形に似て,流域面積466km(^2)のうちカルデラ内の部分が79%にあたる369km(^2)(南郷谷165km(^2),阿蘇谷204km(^2))を占める。これに対し,中流(立野火口瀬~熊本市小磧橋間)は19%の90km(^2),下流(小磧橋~河口間)は2%の7km(^2)である。白川の源流は,南郷谷の東部,阿蘇郡白水村白川・両併一帯にあり,豊富な湧水を集めて火口原の中央を西流,立野火口瀬の戸下(長陽村河陽)で阿蘇谷から流下する黒川を合わせる。白川水源近くの白水村両併の御手水(おちようず)付近(標高500m)から西端の鮎返の滝付近(標高300m)まで高度差は約200m,阿蘇谷側の高度差がわずか50m程度であるのに比べてはるかに大きく,川の流れも早い。阿蘇谷の黒川・黒流・黒戸川などの地名とは対照的な白川の河川名も,多くの水源から湧出する清水を集め,岩を嚙んで流れ下る様子から名付けられたものと思われる。支川の黒川は,南郷谷側の白川本流に比べて流路は長く,流域面積も1.2倍を超える。立野火口瀬のV字谷を出た白川は,外輪山西麓に続く洪積台地を刻み,河谷平野を蛇行しながらほぼ真西に流下する。河谷の南北に広がる合志(こうし)・高遊原(たかゆうばる)・託麻原台地などがそれぞれ菊池川・緑川の水系となるため,白川中流での支川はわずかに鳥子川(延長4.5km)だけという特異性をもつ。カルデラ内から流出する河水は,中・下流に沿う水田約4,000haを養っているが,減水深(水の浸透里)の大きな中流の段丘面で瀬田上井手・瀬田下井手・津久礼井手などの諸堰を通し,多量の取水がなされるために,馬場楠(ばばぐす)堰以下の下流側ではしばしば用水不足に遭遇する。このため,白川から取水する十八口堰・井樋山(いびやま)堰の用水区域のうち約810haは,豊富な湧水を水源にもつ加勢川(緑川水系)からポンプ揚水により灌漑用水を補給する。このような用水不足とは対照的に,ひとたび豪雨に見舞われるとたちまちヨナ(火山灰)を含む泥流となって氾濫し,泥水害をもたらす。白川が貫流している熊本市の中心部は,これらの土砂が堆積したいわば巨大な自然堤防上に立地しており,南側の沖積低地に向かって鳥趾状に分派する4条の微高地がかつての乱流・氾濫をうかがわせる。熊本市の市街地南部,蓮台寺町付近で白川の流路は直角に曲がり,南流から西流に転じる。古代における託麻郡と飽田(あきた)郡との境界の設定,弘安5年から建武2年までの13通の公験を収めた大慈寺重書案(大慈寺文書/県史料中世2)などから,13世紀頃まで白川は川尻町付近で緑川に合流していたものとみられ,干潟開発のために瀬替がなされたと推定することもできる。なお白川は平安期の檜垣嫗,鎌倉期の後藤基政などの歌にうたわれる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7225831