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南郷谷
【なんごうだに】


阿蘇カルデラの南半を占める火口原。三日月形をなし,阿蘇郡の高森町・白水村・長陽村・久木野村が含まれ,約2万1,000人が居住(昭和55年)。面積23km(^2)。豊富な湧水を水源にもつ白川が谷の中央を西流,立野火口瀬の戸下(長陽村河陽)で黒川と合流する。流域面積165km(^2)。標高は,阿蘇外輪山と根子岳のすそあいに位置する谷頭の集落洗川(そそがわ)(高森町)の750mに対し,西端の鮎返の滝付近では300mとなり,高低の差が大きく,白川の下刻作用により下流側では河岸段丘が発達。耕地3,586haのうち,水田が2,184ha(約61%,昭和55年)を占め,昭和35年以降の地下水のポンプアップによる開田に負うところが大きい。東部の高森町色見一帯では畑地が多く,準高冷地の気候を生かしたダイコン・キャベツなどの野菜栽培が行われる。カルデラ内は,火口原の水田,畑地から森林,草地へと垂直的な土地利用の配列が見られ,山腹の草地は肥後の赤牛で知られる褐毛和牛の飼育を支える。中央火口丘側のすそ野に沿って熊本方面と宮崎県の高千穂・延岡方面とを結ぶ国道325号,第三セクター南阿蘇鉄道が東西に貫く。同鉄道の終点にあたる高森町は南郷谷唯一の市街地を形成,阿蘇外輪山東部を結ぶ交通の結節点をなす。しかし商圏は狭く,南郷谷における中心地機能の役割もきわめて弱い。南郷谷の西端にあたる長陽村には,白川に沿って戸下・栃木の温泉,夜峰山中腹に地獄・垂玉(たるたま)の温泉があり,久木野村にグリーンピア南阿蘇,高森町には国民休暇村がある。昭和51年,白水村吉田から阿蘇山上に至る阿蘇登山道路阿蘇吉田線が開通した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7226900