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矢岳高原
【やたけこうげん】


人吉市南部,宮崎県えびの市との境界付近にある高原。東西約3km,南北約6kmにわたって展開し,標高およそ500~800m。江戸期には人吉藩と薩摩藩を結ぶ街道(加久藤越)が通じ,大畑(おこば)集落(人吉市)に入る所には番所が設けられていた。明治42年には鉄道としては珍しいループとスイッチバックを併用し,2kmを超える矢岳トンネルで高原を越える現在の肥薩線が敷設され,熊本県最南端の矢岳駅(標高536m)が開設された。昭和52年には円周600m,橋脚の高さ60mに及ぶループ橋を有する国道221号が完通し,交通の要衝になっている。明治期までは焼畑が一般的に行われて,大畑の地名も焼畑に由来するという。現在はスギ・ヒノキの植林施業地帯になっており,茶畑や牧場も開かれている。国道221号に設けられている展望台からは足下に加久藤盆地が展開し,そのなかを川内川が緩やかに蛇行しながら東西に流れ,遠景に霧島連峰(宮崎県)を望見し,春は新緑とワラビ,秋はススキと紅葉の景勝地である。気候は宮崎県側と一線を画し,特に冬季には熊本県側に積雪を見ても宮崎県側にはまったくないことが多い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7228101