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八代平野
【やつしろへいや】


熊本平野の南方にある平野。八代市,八代郡の千丁町・鏡町・宮原町・竜北町,下益城(しもましき)郡の松橋(まつばせ)町・小川町にまたがる。面積約230km(^2)。東は日奈久断層崖に境され,西は八代海(不知火海)を挟んで天草諸島に対する。北から大野川,砂川,氷川,鏡川,大鞘川,水無川(日置川),球磨(くま)川が西流する。宮原町・小川町付近の丘陵には後期古墳が多数分布し,5~6世紀頃の肥後国の中心地であった。八代郡の氷川三角州にある竜北町野津付近は,のちの肥伊郷で,火の国の発祥地といわれる。平野北部の隣村下益城郡豊野村下郷字寺村の浄水寺の寺領は天長3年には388町歩に及び,八代平野にある寺領は条里制による土地開発であった。小川と宮原はかつては背後山間地の東陽村や五家荘との物資取引の中心地として繁栄した谷口集落。平野は複合三角州と干拓地からなり,17世紀頃から干拓地が造成されてきた。19世紀に造られた四百町新地(文政2年完成),七百町新地(同4年完成)は江戸期の大規模な干拓地。20世紀になると,郡築新地1,050ha(明治38年),県営の北新地637haと南新地570ha(大正14年),国営の金剛干拓426ha(昭和33年),八代港干拓253ha(同40年),国営の不知火干拓528ha(同41年)などが次々に完成し,最新の芦北干拓(日奈久)30haが同42年に完成した。八代平野の耕地約1万haは大部分が水田で,その45%は二毛作田。二毛作田のうち35%で藺草栽培が行われ,4%をトマト・プリンスメロン・キュウリ・スイカなど果菜園芸のビニールハウスが占める。八代市ではガラス温室が登場し,現在9か所でトマト・メロン,1か所でバラが栽培されている。八代市は工業都市でもあり,日本セメント八代工場は明治23年10月から操業,九州初のセメント生産が始まった。大正13年には樺太工業八代工場(現十條製紙),昭和12年には昭和農産加工(現三楽オーシャン)八代工場と日本ソーダパルプ(現興人)八代工場が建設された。なお日本セメント八代工場は昭和55年4月に閉鎖。大島埋立地には日本石油ほか5社による貯油タンク102の大島石油基地がある。八代平野の交通幹線としては,鹿児島本線(明治29年八代まで開通),国道3号のほか,九州自動車道(昭和55年3月八代まで開通)が山麓部を走り,海岸部には広域農道(昭和58年11月開通,25.7km)が通じる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7228117