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大野川
【おおのがわ】


大分県中央部をほぼ北流する県下最大の河川。1次支川35,2次以降支川97を有し,延長76.375km,流域面積1,460km(^2)(全国45位)。1級河川。灌漑面積9,800ha。大分市白滝橋(しらたきばし)における流量平均値年平均毎秒61m(^3)・最大7,570m(^3)。祖母(そぼ)山(1,756.7m)の南西側に源を発し,阿蘇山東側山腹などの諸河川を合わせて,竹田(たけた)市,大野郡緒方(おがた)町・清川(きよかわ)村・三重(みえ)町・千歳(ちとせ)村と大野郡内をほぼ北東流,同郡犬飼(いぬかい)町で流路を北に変え,大分市戸次(へつぎ)を経て,同市鶴崎(つるさき)で別府湾に流入する。「豊後国志」大野郡の条には「一に藤原と曰う。直入郡三宅郷より来たり,東北行,緒方・大野郷界を分かつ。横に郡中を過ぎ,百渓の水を控いて大分に至り,海に入る,郡の大川。その源直入諸水,十川の東に会して,広瀬と曰う。水崖上より落つ,蝙蝠瀑と名づく。すなわち大野川と為る。炭焼及び柏野古城下を過ぎ,南折,軸丸の東を経て,高雄堡下を過ぎ,漆生を経て平治川と為る。小牧山西北を過ぎ,緒方川を合わせ,沈堕瀑と為る。北に矢田雌沈堕の水を受け,東行,岩戸に会す。向野の東南を遶り,北折白鹿山下を過ぎ,蟹戸川と為る。東北流,赤嶺川を合わせ,茜・萩原二水を導き,柴北の水を合わせ,犬飼川に下る」とある。同書大分郡の条には犬飼(いぬかい)川といい,「その源は遠く直入に発し,大野を過ぎ,二郡を周流し,諸水を引いて,原田・犬飼巷に出て犬飼川と為る。此郡の鳥巣に至り,花香・岩上等の諸村を経て,東志津留川の水を控き,西竹中の流を飲み,相率いて北馳,利光を過ぐ」とある。さらにその下流では利光(としみつ)川といい,「犬飼川此に至りて利光川と為る。川牀・備後の西を経て,光永川を合し,東北行,松岡に至る。海部郡佐井郡大津留の東を過ぎ,東西岐流,高田をはさんで,二水双流,俗呼両又川と名づく。その西を乙津川と曰う。謂う所の鶴崎津なり。此水また分流,小中島および家島をはさんで,並び流れ去りて,海に入る」とある。上・中流部は阿蘇溶結凝灰岩の丘陵・台地上を穿って流れ,河床勾配は急で,滝・峡谷が多く,穿入蛇行が目立つ。水量も多いため,発電所も小さいながら6か所にあるが(九州電力沈堕発電所・犬飼町戸上(とのうえ)にある県営大野川発電所など),流域は火山地帯のため適当なダム建設地点がなく,大野川の包蔵発電水力14万1,264kw(推定)を充分に開発するには至っていない。また城原(きばる)井路・富士緒(ふじお)井路・荻柏原(おぎかしわばる)井路など数多くの井路が開削され,沖積低地だけでなく,火山性の丘陵・台地,さらに阿蘇火山山腹までも水田化するに至っている。県営大野川発電所の場合,上流で取水し,それを隧道によって発電所まで導いて発電し,使用した水を下流の農業用水に利用している。また多くの井路は地形的制約を受け,ことに火山性丘陵を流れるため水路の漏水性が高く,隧道部分が多い。中流部には河岸段丘がよく発達し,水田・集落が立地している。阿蘇溶結凝灰岩の岩壁にはばまれて,大雨時の水は上・中流で氾濫することなく,流れのほとんど全量が下流に運ばれるため,下流部には氾濫原が発達し(明治26年と大正7年に戸次町付近の増水時水位は平水面上10mに及んだ),三角洲を形成している。洪水の災害も多く,大分市高田などには輪中も見られる。このように大野川流域は,火山性の地形のため水量は多いが,その水量を充分に利用できず,また災害も多かったが,農業水利事業と発電所開発とを結びつけた水利事業も行われるなど,流域は変貌をとげつつある。江戸期より,河口の三佐と沈堕滝下の間には水運が発達した。「日州採薬記」に「弘化二年三月七日……犬飼川ニ沿テ往ク。水中ニ舟ヲ繋キ,車輪ヲ付ケ,機ヲ設ケ,水勢麦ヲ磨ス。名テ舟車ト云。岸ニ傍テ処々数艘アリ。遠望スレハ淀川ノ引舟ノ如シ。水ヲ隔テ犬飼ヲ望ム」とある。明治14年の大分県統計表には14の河岸に,16の船問屋,215隻の運船があげられているが,国鉄豊肥本線開通(昭和3年)とともに急にさびれ消滅した。大分・鶴崎臨海工業地帯へは,1日55万tの工業用水を供給しており,農業・工業の両面から大分の経済活動を支えている。→茜川(あかねがわ)・稲葉川(いなばがわ)・緒方川(おがたがわ)・奥嶽川(おくだけがわ)・玉来川(たまらいがわ)・野津川(のつがわ)・平井川(ひらいがわ)・三重川(みえがわ)(支流)




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「角川日本地名大辞典」
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