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深耶馬渓
【しんやばけい】


耶馬渓の南部,山国川の一大支流山移(やまうつり)川とその枝流一帯の渓谷の総称。深耶馬渓は以前は新耶馬渓といわれていたが,柿坂~森間の道路が改修され,山移川の枝流とされていた深瀬谷を通るようになり,昭和期に入って新の字を深に改めた。ここは耶馬渓の北西部一帯が成層集塊岩と旧耶馬溶岩の風景が主体をなしているのに対し,まったく別種の新耶馬溶岩の浸食風景である。玖珠(くす)郡に源を発する深瀬谷は今は山移川の本流とされ,元本流の折戸(おると)川・芋ノ竹(いものたけ)川・谷の川内・大谷川などの一帯で,岩石美に加えて秋の紅葉がすばらしく,今日では耶馬渓観光の最大の中心地となっている。新耶馬溶岩はまだ幼年期の地形をなし,標高約400mほどの一大溶岩台地をつくり,それに垂直50mほどの浅くて狭い浸食谷をうがっている。峡谷の両岸は断崖絶壁と多くの石柱,そしてカエデその他の雑木,赤松を主とした原始林におおわれ,峡谷の底が観光の中心である。溶岩台地はいくつものメサに分離され高原台地をなし,わずかな人家が散村状に分布。原始林中には猿・鹿など野獣・野鳥が生息。観光地は耶馬渓町の中心大字柿坂より山移川をさかのぼること約13kmの一目八景が深耶馬渓の中心地であるが,そのほか麗(うつくし)谷・錦雲(きんうん)峡・紅葉(もみじ)谷(深瀬峡谷)・折戸峡・大谷渓谷など多くの景勝地がある。標高約400mの台地上には平家の落武者の住みついたという伝説のある家籠(えごもり)の集落などあり,昭和40年頃までは自転車も通れない秘境であったが,辺地振興法により自動車道も通じ,また養蚕団地も設けられた。山移川下流には耶馬渓ダムが建設中である。中流八木蒔(やぎまき)付近には第三紀層があり,柴石といわれる植物化石も出土する。ボーリングにより鴫良(しぎら)・一目八景には温泉も湧出している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7231179