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青島
【あおしま】


古くは淡島(あわしま)・歯朶(しだ)の浮島・鴨就(かもつく)島とも呼ばれた。宮崎市南部海岸に位置する陸繋島。亜熱帯植物が全島に繁茂する。日南海岸国定公園の北端にある。周囲約1.5km,面積約4.4ha。淡島の古称は,神代に伊弉諾尊・伊弉冉尊の2神が国生みの初めに淡島を生んだという伝説による。歯朶の浮島は伝説によれば,彦火火出見命が,塩土翁に助けられて間なし勝間の舟に,シダの葉を敷いて神の国に送られたことに由来する。鴨就島は彦火火出見命が,豊玉姫への返歌「沖津鳥 鴨つく島に 我が寝ねし 妹は忘れじ 世のことごとに」による。青島と呼ぶのはかなり古い時代からと思われる。永禄5年伊東義祐が,佐土原(さどわら)から飫肥(おび)に赴く紀行中に「薄霧の 絶え間を見れば 秋風に 残る梢や 青島の松」と詠んでいる。「日向地誌」には「青島尖リ浜ヨリ二,三町離レテ海中ニ浮出タルカ如キ小島ナリ。潮退キシ時ハ足ヲ霑サズシテ至ルベシ。縦三町四十七間余,横一町十九間,周囲十二町余。但シ文化七年庚午ノ測量ニハ,周囲九町トアルハ,其草木アル所ヲ挙グ。今海磯ノ四周ヲ測ル故ニ同シカラズ」とある。上記の文中「文化七年庚午ノ測量」とあるのは伊能忠敬が行った測量で,文化7年の「測量日記」に「外ニ折生迫持淡島一周ヲ測,[淡](淡に○)ヨリ渡巾二丁三十六間二尺,一周八丁二十七間」とあり,両書によれば,青島の周囲は岩礁の周囲が約1.3km,植物の生えている部分の周囲が1km弱,陸地から約300mである。東西に長い楕円形の当島の標高は5.7m。地質的には新第三紀層の宮崎層群に属する,砂岩と泥岩の薄い互層の隆起海食台である。島と海岸との間には砂州が発達して,満潮時には島になるが,干潮時には陸続きになり,島と海岸との間をコンクリートの弥生橋が結んでいる。島の醸し出す自然の美しさや珍しさ,島から眺める対岸の白い砂浜と緑の松林,鬼の洗濯板(岩)といわれる奇岩,それらが一体になって観光地青島が形成されたのであるが,現在は青島へ渡る道路に沿って,土産物屋・食堂などが軒を連ね,国道220号沿いにはホテルやビルが,島を背景に立ち並び,自然美を誇った昔日の面影はない。当島を取り巻く鬼の洗濯板といわれるケスタ状の波状岩は,青島の隆起海床と奇形波食痕として昭和9年国天然記念物に指定された。波状岩は島の周囲および日南海岸の戸崎鼻から巾着(きんちやく)島に至る海岸に分布している。一帯は傾動地塊の鵜戸山地が東南に緩傾斜し,干潮時に幅約20~100mの岩列が見られる。これは,砂岩泥岩の傾斜した薄い互層を,海波が差別浸食した結果,軟らかな泥岩層の浸食が進み,硬い砂岩層が残ったものである。砂岩の表面には亀の甲羅に似た,節理に沿う縞模様の風化が見られる。当島は地理的には宮崎平野の砂浜海岸と屈曲に富んだ日南海岸との接点に位置する。地質的には宮崎層群からなる古い青島が削りとられて形成された波食台の上に,厚さ数m程度の貝殻層を主とした砂礫層が堆積して,島の中央部ができている。波食台の形成と貝殻の砂礫層の堆積は,縄文海進の極盛期(約6,000年前)以降である。その後漂着した種子により,熱帯・亜熱帯の植物群落が繁茂した。黒潮のもたらす高温多湿は島内にほとんど霜を見せず,北半球最北のヤシ科植物の群生地をつくり,ビロウ樹の自然林約4,300本が青島ならではの景観を生んでいる。大正10年には青島熱帯植物産地として国天然記念物の指定を受け,昭和27年青島亜熱帯性植物群落と改名されて,国特別天然記念物に指定された。島の80%を占めるビロウ樹の密林内外に,モクタチバナ・タブノキ・ハマビワなどがわずかに混じっている。島内の植物は栽培植物29種を加えて,63科226種(うち27種が熱帯・亜熱帯性)である。島内に青島神社があり,天津日高彦火火出見命・豊玉姫命・塩筒大神が祀られ,縁結び・安産・性病平癒・航海安全などが祈願される。なお,青島の奇岩とビロウ林は日向の十景の1つである。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7234241