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梅ケ浜
【うめがはま】


県南部,日南市東方に位置する広渡川河口右岸の海浜。日南海岸国定公園に属し,県名勝の指定候補地。旧平野村の地で,浮世絵師安藤広重が一国一景を描くに当たり,画材として選んだ景勝地。梅ケ浜の地名は,100株に近い梅の木があったことにちなんだもので,「日向地誌」には「油津ノ東一山阪ヲ逾テ平山村ニ至ル海浜ナリ 東西二町許南北八町余人家三十戸 其地古来ヨリノ梅荘アリ 地名モ因ヲ起リシト見ユ 今ヨリ二十年前マテハ臥竜梅十余株猶存ス 子大ニシテ味美ナリシガ今ハ悉ク畦圃トナル」と記されている。この梅の実は副食物としてではなく,軍事用の梅干しの呼吸つぎの薬として加工されていたようで,古文書の「甲冑著用弁」によれば「息合の薬,心掛け持つべし,又白布三尺許を水に浸し,是を綿嚙の辺に結付け置き,物前に臨みたる時,口に吸ふもよし。又,梅の肉を乾堅め,丸にして持つもよし。塩を入るるは悪し,塩気もあれば後に喉渇するものなり。是亦小き布袋に入れて,具足の綿嚙に付け置くべし」と記されている。梅ケ浜について「日向地誌」では「本村(平野村),東南油津ヨリ一阪ヲ逾テ広渡川ニ至ル海浜ナリ 東ハ広渡川ヲ隔テ直ニ平山風田ノ海浜ニ連ナル平沙明媚乱松相映シ大小ノ奇巌汀沙ノ間ニ列峙ス 書画モ及ハサル絶勝ナリ 凡四方ノ騒人墨客南游者此ニ游ハサルハナシ 今其小景ノ名アル者七八ヲ下ニ掲グ」と記され,さらに竜穴と呼ばれる海食洞,竜踞石・稲荷山・雀八重(すずめばえ)巌・カウ八重ノ巌・タテ巌などの奇岩の規模などが詳細に載せられている。これらの奇岩にはさまざまの伝説がある。梅ケ浜は約1kmの砂浜と奇岩群からなるが,地質的には新生代第三紀の宮崎層群(3,000万~700万年前)の砂岩および泥岩の分布が見られ,堅固な砂岩は浸食に抗して岩礁となり,これを核としながら広渡川の供給する土砂を堆積して陸繋島となっている。砂岩と泥岩の浸食の差はケスタ地形をも生み出している。沿岸流や海波の作用で砂浜・奇岩群・海食洞が形成され,大富士・地の松島・沖の松島・甲の八重・雀八重・石門などの奇岩怪石と,鬼窟・竜洞などの海食洞が知られ,梅ケ浜一帯は海水浴場・公園・ホテル・料亭などの観光施設も備える行楽地。広渡川を隔てた,北の風田浜は,神武天皇ゆかりの伝説地で,船つなぎ松・駒形石・平山神社(通称駒宮神社)がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7234471