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綱ノ瀬川
【つなのせがわ】


西臼杵(にしうすき)郡日之影町と東臼杵郡北方町との境界をなす1級河川。五ケ瀬川の1次支流。大分県境近くの五葉(ごよう)岳(1,569.7m)南斜面を源流域とし,日之影町梁崎まで全長19.3km,流域面積80.6km(^2)である。上流の鹿川地区は仏像線の名称で知られる構造線(断層)を北縁とする小盆地で,わずかばかりの谷底平野がみられる。川はここに鹿川渓谷をつくっている。花崗岩を浸食する美しい谷で,落葉広葉樹を主とする植生は渓流に四季それぞれの趣をそえて美しい。近年ここにキャンプ場が設けられ,自然遊歩道もつくられるなどで訪れる人も多い。鹿川盆地を過ぎると本流との合流点まで谷底平野は全くない。わずかに菅原(すげばる)集落のある部分に,阿蘇火山の噴出物による段丘性台地をみせるほかはV字谷の連続である。道路も川から離れ山腹の緩傾斜部分を通る。V字谷の白眉は比叡山(774m)と矢筈(やはず)岳(658m)の対峙するところである。比高500mにも及ぶ急崖は「天を摩する重畳たる巨岩怪石,或は頭上に聳え,或は脚下に横たわり,その間河流激して岸を嚙む壮観」(日向郷土事典)である。休日ともなると遠く北九州や四国あたりからもクライマーたちがやってくる。この険しさが流域に水力発電所を立地させた。上流から新菅原(7,500kw)・黒原(600kw)・梁崎(480kw)の各発電所がある。流域は鉱産物を産することでも知られる。なかでも槙峰鉱山は古くからの鉱山で,明治期以降は三菱系企業により経営されてきた。盛期には足尾鉱山などと並ぶわが国でも屈指の銅山であったが,昭和42年その長い歴史を閉じた。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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