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一ツ瀬川
【ひとつせがわ】


本県中部を潤す主要河川の1つ。米良(めら)山地に源を発し西都(さいと)市を経て日向灘に注ぐ2級河川。全長91.1km,流域面積83.9km(^2)。源流域から杉安地区(西都市)までは,壮年期の九州山地に深いV字谷を刻んで流れる。かつてここを通過した高山彦九郎や伊能忠敬が,その岨道に難渋した記録を残しているがこの地形の険しさが米良荘を隔絶性の高い隠田集落(落武者たちが隠れ住む集落)に仕立てた。西米良村狭上(さえ)地区にはいまも焼畑慣行が残っている。またこの一帯の山地は九州中央山地国定公園の指定を受けている。この地域の隔絶性は西米良村を慢性的過疎に追い込んでいる。人口も2,000人をきるところまできているというが,村ではこの隔絶性を逆手にとった開発がなされつつある。旧小学校を改造した保養施設米良の里がそれで,名誉村民制度との抱き合わせによる効果に期待がかけられている。河床から山腹にかけての深いV字谷を利用して水力発電所も多くみられる。幹線流域だけで槙ノ口・村所・一ツ瀬・杉安の4発電所が稼動しており,上流域の石河内には建設中のものもある。一ツ瀬発電所は出力18万kwで,高さ130m,堤長415mのアーチ式ダムとともに西日本一の規模を誇っている。一ツ瀬川の沖積平野形成は杉安地区から始まる。ここから宮崎郡佐土原(さどわら)町の河口まで,本県でも最大級規模の沖積平野をみせるが,古墳群からピーマンまで,その歴史的展開の豊かさでは他の追随を許さないものがある。古代を彩るのは西都原古墳群と日向国衙の存在であるが,中世の日向に君臨した伊東氏の史跡も中心はこの川の流域である。そして現在は日本一の生産量を誇る西都市のピーマンをはじめ,児湯(こゆ)郡新富町,佐土原町の施設園芸農業は,本県農業の看板ともいえる。これらに佐土原養鰻業や,進出企業群を加えると,一ツ瀬川沖積平野の果たしつつある役割に改めて刮目する。この川の河口部分を地図でみると,北から南にツルの嘴のように長い砂州が延びているのがわかる。これは川の吐き出す土砂と日向灘の沿岸流などがつくる地形で,内陸側にできる細長い入江は潟湖(ラグーン)と呼ばれる。昭和54年本県で開催された第34回国民体育大会の時,このラグーンは競艇コースとなり,若者たちの活躍の舞台となった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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