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耳川
【みみかわ】


東臼杵(ひがしうすき)郡椎葉(しいば)村から日向市美々津(みみつ)港まで1市4町村を流れる2級河川。椎葉村の熊本県境寄り山地を源流域とし,東臼杵郡の諸塚村―西郷村―東郷町―日向市の流路をたどる。県北の主要河川で全長103.4km,流域面積881km(^2)。十根(とね)川・坪谷(つぼや)川など25の支流がある。源流域から河口の美々津まで沖積平野と呼べるほどの平地はほとんどなく,すべてがV字谷である。とりわけ上流の椎葉地域の谷は深く規模も大きい。この険しさゆえの隔絶性が,隠田集落を仕立て鶴富姫伝説を残している。民俗学の祖柳田国男が紹介した狩猟伝承など,一連の民俗風習が残るのも同様の理由であろう。地形の険しさは水力発電とも結びつく。上椎葉発電所(9万kw)をトップに,現在この水系には8か所に発電所が設けられ,全部で31万5,280kwの電力を得ている。これは県下全河川の水力総発電量のおよそ35%に当たる。山間地では谷筋が他地域と結ぶ通路となる。上椎葉で分岐する小崎(こざき)川の谷は,児湯(こゆ)郡西米良(にしめら)村に通ずる道で,いま奥地スーパー林道として整備が進みつつある。十根川の谷は西臼杵郡五ケ瀬町鞍岡(くらおか)と結び,七ツ山川の谷は飯干(いいぼし)峠を経て五ケ瀬町三ケ所地域につながる。中流域の支流坪谷川の谷は,往時は細島と米良をつなぐ往還であった。河口の美々津は耳川を介して入郷地域を後背地とする港町であった。記録によれば,河口から26km上流の西郷村山三ケ地区あたりまで舟筏が通じたという。この舟運により椎葉地域はもとより,高千穂周辺の物資まで運び出した。美々津には廻船問屋が軒を連ね,1,000~500石の運船6隻,500~250石の運船5隻が,ここを基地に活躍した。「日向地誌」によれば「一ケ年出入船数大約二百四五十艘,出入貨物詳ナラズ」とある。いまも,当時の町並みの一部が保存されている。河口からおよそ10km上流の福瀬(ふくぜ)地区でも福瀬商社をつくり,上方と直接交易をした記録が残るが,この事からも耳川がその流域住民に対して果たした役割の大きさがわかる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7236133