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都城盆地
【みやこのじょうぼんち】


県南西部に位置する広大な盆地。都城市を中心に北諸県(きたもろかた)郡三股町・山之口町・高城(たかじよう)町・山田町・高崎町,鹿児島県北東部の財部(たからべ)町と末吉町の一部にまたがる。南北約33km,東西約13km,面積約760km(^2)。北東から南西を長軸にした楕円形をなし,盆地底(標高約150m)が北へ緩やかに傾斜している。盆地東部は南那珂(鰐塚(わにつか))山地の断層崖,北部は新生代第三紀四万十累層群上部の丘陵,北西部は霧島山地,西部から南部にかけては,火山灰に覆われた四万十累層群上部の丘陵性の山地に囲まれる。盆地の中心を大淀川が北流し,東から萩原川・沖水川,西から庄内川などの支流が合流して,盆地底としての広い沖積地を構成している。気候は内陸性で,年間霧日数48,霜日数66と,霜が多く霧が深い。都城の旧称は都州(みやこじま),または霧の海といい,高千穂の伝説とのかかわりが深いといわれる。地名の由来は天授元年(永和元年),北郷義久が,築城して都城と称したことによるとされるが,神武天皇が都跡之城を築き都城と称したとも伝えられる。都城盆地は南九州の構造的低地帯で,四万十累層群を基盤にして,火山噴出物・砂礫堆積物・安山岩類などから構成されている。盆地の生成を地史的にみると,四万十累層群の隆起後,陥没が起こって山間低地となり,やがて水をたたえ山間湖となった。湖底には都城層といわれる砂礫が厚く堆積し,さらに加久藤(かくとう)・阿多・姶良(あいら)の火山噴出物も流入した。この間,新第三紀鮮新世に母智丘(もちお)・高の峰(こうのみね)付近で安山岩質溶岩を噴出している。洪積世になると姶良火山の噴出物である入戸火砕流(シラス・灰石ともいわれる溶結凝灰岩)が,山間湖を埋積していった。浅くなった湖には,周囲の山地から砂礫やシラスが流れ込み,水成2次シラス(砂・シラス・粘土の互層)が堆積した。その後,大淀川の頭部浸食が盆地北端に達し,狭隘部に観音瀬がうがたれ,湖水は排水が進み,平坦な湖底はいくつもの谷に開析され,台地・段丘・扇状地などを形成した。盆地の東半分は沖水川が扇状地をつくり,西半分は庄内川や横市川によって台地が分断された。その後,霧島火山は第四紀更新世に活発な活動を始め,ローム層・クロボク層(黒色火山灰)・ボラ層(降下軽石)を盆地全域に噴出した。都城盆地は内陸交通の要衝である。鉄道は国鉄日豊本線が通り,都城駅から国鉄志布志線・吉都線が分岐する。国道は10号・269号・221号の各線が交差し,九州自動車道宮崎線も建設されているが,これはえびの市―人吉市―八代市間が未完成なので,機能を十分に発揮していない。盆地内の耕地は約1万8,000haで,畑作は東部山麓扇状地や西部の洪積台地,水稲作は中央部の沖積低地で行われている。米・大麦・甘藷・サトイモ・キャベツ・ハクサイ・カキ・葉煙草・茶などの特産物があり,中でも米・キャベツ・ハクサイ・茶は県下第1位の生産量となっている。畜産・酪農も盛んで,乳用牛・肉用牛・豚ともに飼育頭数は県下第1位で圧倒的に多く,採卵鶏も多く,霧島集約酪農地域を形成している。工業は大規模工場の進出こそみられないが,農林畜産物の加工業が盛んである。主なものは,醤油・味噌・焼酎・漬物・ハム・茶・瓦・陶器類で,特に焼酎・ハム・茶は有名である。家具も販路を広げ,また,木刀・大弓は全国的に著名である。都城盆地の農村部と大隅半島(鹿児島県)地域が,都城市の商業の後背地となり,商戦は激烈で,都城市の商業都市としての発展を促している。都城市を中心にした盆地内の5町の農協は合併して都城農協を結成し,全国最大規模のマンモス農協として活動している。都城の年平均気温15.7℃,最高気温21.5℃,最低気温10.9℃,降水量2,709mm。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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