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宮崎平野
【みやざきへいや】


日向平野ともいう。県中央部の日向灘に面する隆起海岸平野。面積約800km(^2)の県内最大の平野で,わが国の隆起海岸平野を代表するものの1つ。県庁所在地の宮崎市を中心に2市11町にまたがる。宮崎の地名は国郡制定当初からあったものと推察される。「和名抄」に日向国宮崎郡とあり,三也佐岐と訓まれた。「平家物語」に,宮崎は神武天皇の旧都であると記され,「神皇正統記」「日向風土記」にも同様のことが述べられている。このことは,その伝承が古くからあったことを物語るものである。宮崎の地名の起こった地点は,宮崎市の矢ノ崎といわれる。近くの下北方の台地に神武天皇宮居の遺跡と伝える皇宮屋(こぐや)がある。宮崎とは皇宮屋のさき(前)という意味で,はじめは矢ノ崎の地を指したものと考えられる。当平野は地理的位置からも政治・経済上も県の中心地域で,古代には西都(さいと)市妻地区三宅に,日向国府が置かれていた。江戸期には小藩が分立していた。平野北部は高鍋藩・佐土原(さどわら)藩,西部は鹿児島藩,南部は飫肥(おび)藩に分割され,穂北(ほきた)・本庄(ほんじよう)は幕府領,宮崎市は延岡藩の飛地,飫肥藩・鹿児島藩・高鍋藩・佐土原藩・幕府領と細かく分割支配されていた。現在は県内人口の40%が居住する。宮崎市の年平均気温は17.4℃と,宮崎平野は気候温暖で降雪をみない。早期水稲を含む稲作のほか,ハウス園芸が盛んで,カボチャ・キュウリ・トマト・ピーマン・スイカ・メロンなどの特産野菜の促成栽培およびミカンなどの果樹栽培も行われ,関東・関西方面にフェリーで出荷される。平野の中枢,宮崎市の主な都市機能は政治・商業で,商戦は激烈である。宮崎平野の道路交通は国道10号を中心に道路網が広がり,九州自動車道の開通で,都城盆地との時間・距離が短縮された。国鉄日豊本線や日南線,宮崎空港,現在建設中の宮崎港によって,県外と結ばれる。宮崎平野の東側は日向灘で,海岸線は日向市美々津(みみつ)地区と宮崎市青島地区を結ぶ,南北約60kmの単調な砂浜海岸で,当平野は青島・美々津および,内陸の東諸県(ひがしもろかた)郡綾町を頂点にした三角形をなす。北西は九州山地,南西は南那珂山地と接し,地形的には丘陵・台地・沖積平野から成り立つ。宮崎平野の3分の2は台地で,更新世の洪積台地であり,丘陵は新第三紀の宮崎層群から構成されている。新生代第四紀の礫・砂・シルト・粘土を含む沖積層からなる沖積平野は,河川の流域に沿って分布するにすぎない。台地は大淀川以北に発達しており,一ツ瀬川以北では茶臼原(ちやうすばる)・三財原(さんざいばる)・新田原(にゆうたばる)・川南原などが知られる。児湯(こゆ)郡高鍋付近から北部は,海岸まで段丘が迫り,海食崖が発達している。川南原の台地面の末端は,高さ約50mの海食崖である。これらの段丘は,河成段丘と海成段丘の複合したもので,礫・砂を含む中位段丘堆積物や礫・凝灰質粘土を含む高位段丘堆積物からなる。これら堆積物の上を黒ぼく・赤ほやの火山灰土壌が覆っている。台地縁辺部には湧水が多く,台地を刻む多くの浸食谷とあいまって,宮崎平野には大小500余の溜池が分布する。宮崎平野を東流する大淀川・一ツ瀬川・小丸(おまる)川・耳川などの河川で日向灘に運ばれた土砂は,南流する沿岸流に乗って,海岸線沿いに沿岸州を生み,砂浜を育て砂丘を成長させる。高鍋以南の海岸は,2~4列の砂丘が発達し,その幅は2.5~3kmに及ぶ。一ツ瀬川と大淀川の間には,2~3列の砂丘と潟湖の名残や後背湿地帯があり,宮崎市東端,大淀川河口北岸の海岸砂丘,一ツ葉の浜は著名である。この一帯は現在宮崎港の建設が進行中で,変化が進む。砂丘は南から北へ帯状に続き,砂丘と水田が東西に2~3列交互に分布している。この帯状に細長い砂丘列は有料道路をはじめとする道路に利用されている。最も内陸側の砂丘は固定し,砂丘の地下水が小集落を立地させ,水田地帯の用水源となっている。宮崎市の堂山から阿波岐原地区に至る砂丘には,伊弉諾尊・伊弉冉尊の2神を祀る江田神社や弥生時代の遺跡も多く,砂丘が古代人の生活の場であったことがうかがえる。現在は観光産業と施設園芸農業が盛んで,国際会議の開かれるホテル,自然動物園,国際試合の開催されるゴルフ場などが設置され,また金吹山地区は施設園芸の一大中心地となっている。宮崎平野を東流し,日向灘に注ぐ各河川は,河口付近に広い沖積平野,流域には氾濫原を形成している。宮崎市の沖積平野は北から石崎川・大淀川・清武川・加江田川の本支流流域に形成される。大淀川では,両岸部の沖積平野の発達は著しく,また本庄川の合流地点付近の右岸には,自然堤防が発達している。大淀川自然堤防上の微高地に立地した有田・跡江の集落を含む生目(いきめ)地区のほか,宮崎市内には以下の地域に沖積平野が分布する。新別府(しんびゆう)川と八重川を含む大淀川河口沿岸部,石崎川右岸の住吉地区,清武川・加江田川下流域などである。大淀川両岸には,水や海に関係のある地名が随所に残る。例をあげると,花ケ島・大島・島之内・広島・跡江・細江・江田・江平・今江・赤江・池内・宮崎・矢ノ崎・山崎・城ケ崎などである。これは大淀川の蛇行による流路の変化に伴うものとも思われるが,かつての広大な内湾が,海退により変化し,島・崎・江・池などを形成していった模様をあらわしているものとも推測される。宮崎平野一帯には天然ガスが埋蔵され,現在その一部は採取され,企業化されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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