100辞書・辞典一括検索

JLogos

17

矢岳高原
【やたけこうげん】


県南西部,えびの市の北西部にある高原。国鉄吉都線京町駅から北へ5kmにある矢岳山(739m)を中心に東西方向に延び,標高は600~800m。高原の中心域は矢岳山の北麓から東麓にかけての比較的狭い地域であるが,一連の高地は,北は熊本県人吉市矢岳地区付近,東は百貫山(692.9m)の北側を過ぎ国見山を経て鉄山川まで,西は滝下山(785.3m)西麓辺りまで広がり,地質的には同質の岩石からなる高原地形が東西方向に長く発達している。これは,この高原が加久藤盆地の北側に位置する加久藤カルデラの外輪山に該当し,第三紀鮮新統の加久藤安山岩類からなる部分で,緩やかな高原状の溶岩台地となっているからである。したがって北の人吉盆地側へ緩やかに傾き,南側のカルデラ壁は京町温泉のある川内川沿岸の加久藤盆地側に急崖または急傾斜で下る。矢岳高原は古くから熊本県人吉市方面との交通要地であったが,急なカルデラ壁のため交通の難所で,国道221号はヘアピンカーブをとりながら急斜面を登り,国見山を乗り越え,その北麓にある堀切峠(700m)を通って人吉へと進んだ。幅員が狭く,困難な加久藤越えとして知られた。しかし現在は九州自動車道路の一部併用となり,えびのインターチェンジと直結し,この加久藤越えの部分が大改修されて,幅員拡張,路線一部変更が行われ,トンネルのループが設置されている。さらにループ橋を用いて峠越えする新しい道路となった。国鉄肥薩線は以前から矢岳トンネル,スイッチバックとループでこの矢岳高原を乗り越え,人吉へ通じている。当高原は昭和41年12月に県立自然公園に指定されており,ススキや草原に覆われた高原から南を望む展望は見事で,眼下に加久藤盆地,えびの市街地,川内川の流れを,遠方には霧島連山を眺めることができる。春のワラビ狩り,夏場のキャンプや草スキーが楽しめる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7236252