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粟国島
【あぐにじま】


沖縄本島那覇(なは)市の北西約60kmの東シナ海上にある島。村役場の位置はおよそ北緯26°34′40″,東経127°14′。1島で粟国村を構成。もとはアワグニと称し,のちに転訛して,アグニとなったものといわれる(南島風土記)。「歴代宝案」には亜哇群尼,夏子陽の「使琉球録」には翁居里山,「琉球国志略」には安根山・安護仁,「海東諸国紀」の琉球国之図には粟島と見える。また,ゴーヴィルの「琉球覚書」にガンキニシャン(Gan-kini-chan),バーニーの海図にはアグニュ(Agnnhu)と記す。「おもろさうし」には島内の地名として「かき」が見える。南北2.46km・東西 4 km・周囲12.17km・面積7.90km(^2)・最高標高95.8mで,半円形の低平な琉球石灰岩の島。南西端の筆ん崎付近は標高80m余の断崖で,安山岩や白色の凝灰岩・凝灰角礫岩などの新第三紀火山岩類が露出し,海上から白く輝いて見える。凝灰角礫岩はコーシチと呼ばれ,くりぬいて天水を貯める水槽トゥージをつくるのに利用した。南西部の最高地点付近から北および東側には琉球石灰岩が分布し,3段の海岸段丘を形成する。段丘面上には洞寺と呼ばれる鍾乳洞やライムストーンウォール・ドリーネなどのカルスト地形が見られる。島の東端はウーグ砂浜と呼ばれ,南北長さ 1 kmほどの海岸砂丘が形成されている。島の周囲には裾礁のサンゴ礁が発達し,ウーグ砂浜付近では沖合い500mに達し,干潮時には浅いイノー(礁池)が出現する。土壌は火山岩の露出する地域では赤黄色土,琉球石灰岩地域では島尻マージが分布し,畑地が多い。植生は崖地や御嶽などの拝所にはアカギ・ガジュマルなどの森林,原野にはススキ草原やソテツの低木林が見られる。また筆ん崎付近の断崖には風衝植生が発達する。島内には西・東・浜の3集落があり,サトウキビやサツマイモの栽培を主とする農業が営まれている。近年過疎化が進んでいるが,昭和53年には粟国空港が開港するなど港湾や公共施設の整備が行われ,若者のUターン現象も目立つ。島の祭祀には旧暦6月に行われるヤガン折目がある。このヤガン折目は「由来記」にも見えている来訪神儀礼である。粟国に伝承される古謡の中で「ときなをり」には,ヤヱチミの真庭・ワガリブシ真庭に,神を迎えて,米で造った神酒を神に献上する様が謡われており,また「国御儀式」には,寄り上げ森に登り,桑の木を切ってつくった鼓を讃美している(ウムイ317・322/歌謡大成I)。有名な「照喜納節(ムンジュル節)」と「神里節」はこの島の民謡である。島の名所には南東部のソテツ山や眺望の素晴らしい南西部のマハナ毛などがある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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