100辞書・辞典一括検索

JLogos

25

伊江島
【いえじま】


沖縄本島北部,本部(もとぶ)半島北西方約5kmの東シナ海に位置する島。1島で伊江村を構成する。方言ではイージマという。「おもろさうし」には「いへ」「いゑ」と見える。「海東諸国紀」には泳島,冊封使録には移山(陳侃:使琉球録),椅山・椅世麻(中山伝信録)とも記す。移・椅は方言のイージマのイを写したものであろう。ブロートン以来欧人来琉者はこれをシュガー・ローフ島(Sugar Loaf Island)とするが,「ペリー訪問記」はイー島(Ee Island)と記している。島名の由来は,イイシマ(良い島)・イシジマ(石島)・イリシマ(西の島)などから転訛したとするものなど,定説はない(伊江村史)。東西約8km・南北最大幅約4kmの楕円形をした島で,面積22.55km(^2)・周囲21.16km,最高標高は城(ぐすく)山の172.2m。典型的な隆起サンゴ礁の島であるが,東部に古生代珪岩の残丘城山が屹立して,南北方向の海上からみると航空母艦を想起させる。基盤岩を覆って琉球石灰岩がかなり厚く堆積し,標高75mまでの間におよそ3段の段丘が認められる。冬の季節風にさらされる北海岸には,標高50m以上に達する海食崖が連続するが,城山より南の海岸へは緩やかに傾斜し,海岸には砂浜がみられる。カルスト地形の常で表流河川は発達せず,泉水が少ないため2か月もひでりが続くと作物の不作はおろか飲み水にもこと欠いた(同前)。その対策として多くの井戸や池が掘られた。表層の琉球石灰岩下から湧泉が認められることがあり,北海岸のワジ(湧出)はその最も顕著な例である。また南海岸の川平(かわひら)にもマーガーと称する小規模の湧泉があって利用されてきた。島内8集落のうち東江上・東江前・阿良・西江上・西江前・川平の6集落は城山の東および南側に密集し,真謝・西崎はそれぞれ北西と南西に位置する。阿良・真謝・西崎は明治期以降の開拓地で,住民は本集落からの分出者のほか,本部町その他沖縄本島各地からの入植者が少なくない。14世紀初頭北山の支配下に入り,北山滅亡後は北山監守の支配を受けた。「おもろさうし」巻13‐70,No.815には,伊江の按司の船出だ,神女押笠にお祈りするから,無事にこの海を渡してください,と航海の安全を祈っている。嘉靖年間(1522~66)第二尚氏4代尚清王の第7子尚姓一世伊江王子朝義がはじめて島の按司地頭となる(向姓大宗家譜/那覇市史資料1‐7)。崇禎元年(1628)佐辺親方が総地頭になり,雍正7年(1729)には伊江親方朝叙(6代目から川平家)が総地頭となった(伊江村史)。それ以来,明治12年の廃藩置県まで両惣地頭家の支配を受けた。明治13年伊江島小学校が創立され,県内では最も早く教育近代化の道を歩んだ。中国や薩摩との航路上の要地で,城山は古くから好標識となった。明治30年3月島の西端に伊江島灯台が設置された。沖縄戦の際は飛行場があったため日米両軍の激戦地となり,多くの住民が犠牲になった。軍人2,000人・住民1,500人の戦没者を弔う芳魂之塔,従軍記者アーニー・パイル記念碑がある。すでに疎開した住民のほか,戦後島で米軍に収容された住民2,100人は慶良間(けらま)諸島に移送され,のち沖縄本島に移され,昭和22年3月ようやく帰島,戦災復興にあたった。昭和28年米軍は「土地収用令」を公布,村民は一斉に接収反対に立ちあがり,同36年に「伊江島土地を守る会」が設立されて今日なお闘争が続いている。真謝集落には同45年に建てられた団結道場がある。城山の西方にある米軍の伊江島補助飛行場は,同57年現在の面積8.01km(^2)で,島の総面積の約35%を占めている(沖縄の米軍基地)。住民の大多数は農業・漁業を生業としており,主な産物はサトウキビ・葉タバコ・落花生で,特にサトウキビは王府時代からの伝統もあり,村農協の分蜜糖工場も昭和38年に早くも創立されている。近年,畜産,特に牛の飼育に力を入れており,年2回セリ市が開かれる。漁業戸数は113戸で全戸数の7.8%,近海追込漁によるグルクン(タカサゴ)の漁獲を主とする。城山は島外者から俗にイータッチュー(伊江塔頭)・イージマタッチュー(伊江島塔頭)と呼ばれて知られ,その眺望はすばらしい。島の南海岸一帯は白砂と濃緑のモクマオウが美しい海岸線をなし,海水浴場・キャンプ場・釣場となっている。島の東に伊江村青少年旅行村がある。伊江港と本部半島本部港の間には村有のフェリー城山(419t)・フェリー伊江島(449t)の2隻が就航している。所要時間約35分。観光客が逐年増加している。昭和48年農業用水の溜池(10万t貯水)竣工。同52年1月沖縄本島からの海底送水工事完成。島の大きな課題であった水問題は著しく好転した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7239734