100辞書・辞典一括検索

JLogos

41

鹿川湾
【かのかわわん】


西表(いりおもて)島南西海岸にある湾。方言では特別の名称はないが,旧鹿川村の下の浜を鹿川の泊という意味でカノーヌトゥマリということはある。西表島では数少ない南に開口する湾入で,北風の強い冬場には非常に波が穏やかな反面,夏場には波が荒い。湾の奥はサンゴ礁がなく,砂が厚く堆積した浜になっている。この浜をウラブアと呼び,ここにある大きな洞窟はウラブアイリャーという名前で,鹿川にイノシシ猟や魚とりに来る地元の人々によって利用されてきた。湾の中央部に瀬があり,鹿川の中瀬という意味でカノーヌナズニあるいはウランタピーと呼ばれている。ウランタとは西欧諸国を指す方言,ピーは瀬を意味する。鹿川湾のウランタピーには次のような伝説がある。昔,鹿川の村を外国船が襲って,ツカサの子供を殺してしまった。かろうじて逃れたツカサは,自分の子供の首を浜で見つけて悲しみにくれながら神に祈ったところ,外国船はみるみる沈んで湾の中瀬になったという。台風が接近して波が高くなると,ドーンという爆音に似た音をたてる。その音は5kmも離れた竹富(たけとみ)町崎山の網取集落でも聞こえ台風の予知に役立ったという。現在鹿川湾は両側のサンゴ礁と中央の瀬のため,大型船が入ることは危険で,台風の時に避難して座礁あるいは難破する船が跡を絶たない。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7240240