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田名池
【だないけ】


伊平屋(いへや)島北部にある池。方言ではダナグムイという。伊平屋村田名に属す。現在はガマや浮草などが密生し,水面を見ることはできなくなったが,なお豊富な水量をたたえている。後岳・ウッカー・アサ岳・前岳から流入した水は,田名川(方言ではナントゥ)から海に注ぐ。池の東側にはダナターブックヮ(田名田圃)と呼ばれる水田地帯が広がり,この池はその水源となっていた。灌漑用水路の施設が整備されて農業生産に多大な貢献をしたほか,テナガエビ・モクズガニ・フナ・コイ・大ウナギなどが多数生息しており,地元の人々の淡水魚の漁場にもなった。特に台風やしけで海が荒れると田名集落をはじめ島の人々は魚を田名池に求めた。またカモ・バン・クイナなど多数の水鳥がすみ,島の人々は仕掛けやわなを使ってカモなどを捕えた。周辺には茅葺屋根に用いる茅が繁茂して大いに利用された。池の中央部には浮島があり,琉歌にも「田名の浮島や風ままになびく里ままになびく田名のめやらべ」と見える(琉歌全集481)。田名池の水が流出する田名川は,時として下流(川尻,方言ではナートンチビ)の排水ができなくなり,豪雨・台風の際によく氾濫した。昭和7年川幅を倍に拡張し,堤防を石積みにしたほか,ウザナ橋・ヨナ橋・水門などを鉄筋コンクリート製に改造した。同15年台風でナートンチビが砂に埋まり,排水が不能となって氾濫し,田畑は被害を受けた。同17年,ナートンチビを南の方へ迂回させ,コンクリート積みの防波堤を約300m延長し,水害が減った。田名池は現在は湿原にかわりつつあり,湿原独特の植生が見られる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7240970