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轟の滝
【とどろきのたき】


沖縄本島北部西海岸,轟川の河口から1.3kmに位置する滝。方言ではトドロチノタチといい,名護市数久田(すくた)にあり,数久田轟ともいう。県名勝。高さは約30m。一帯は先新第三系の千枚岩からなるが,滝付近は火成岩の石英斑岩の岩脈が貫入し,岩石の硬軟の差,つまり浸食の差により滝が形成された。「中山伝信録」では轟泉と見える。滝らしい滝のない首里・那覇(なは)の人々にとって轟の滝は有名だったようで,歌人で和文学者だった安仁屋賢孫は,その景観をたたえて乾隆5年(1740)「岩がねの松の梢をくくりきて流れたえせぬ千代の滝津瀬」と詠んだという(名護町六百年史)。また,詠人しらずの琉歌にも,「夏やおしつれて浮世名に立ちゆる数久田轟の滝に遊ば(夏は友人と一緒に世に名高い数久田にある轟の滝に遊びたい)」と謡われている(琉歌全集2436)。嘉慶9年(1804)尚灝王はここに納涼殿を建てさせ,巡遊したと伝える(名護町六百年史)。明治36年の琉球新報によれば,「名護へ旅行するなら是非数久田轟を見るべし」といわれ,名護の有志の寄付により滝の正面に六畳程の茅葺小屋が建てられた(名護市史資料編2)。しかし,この小屋はまもなく壊れたらしい。近隣・遠方からの避暑・遊客は絶えることなく,昭和28年名護町立公園に指定され,東屋や養殖場などの施設が建てられた。近年は上流域の開墾などにより水量も減り,観光地としての影は薄くなっている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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