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舟浮湾
【ふなうきわん】


西表(いりおもて)島南西海岸にある湾。方言ではフネーミナトゥ・フネーミジューという。フネーは舟浮のことであり,ミジューはサンゴ礁に挟まれた水路を指す方言である。ベルチャーの「サマラン号の航海記」に見える西表島西南角のセイモア湾(Seymour Bay)は舟浮湾を指すと考えられる。三方を高い山地に囲まれ水深が深い西表一の良港である。湾の奥はクイラ川とヒドリ川の河口となっている。舟浮湾から元成屋崎と内離(うちばなり)島の間を通る水路はウチバダチと呼ばれ,仲良川からの砂で埋まりやすいために干潮時の航行は小舟でも困難をきたすことがある。クイラ川の河口の西側に流入するピーミチカーラには水落滝と呼ばれる滝がかかり,滝壺に当たるところはドゥンキと称されている。舟浮湾に停泊する船は,この滝から水を補給した。「サマラン号の航海記」には,西表島の湾入の多くはサンゴ礁が発達しているため,川から飲料水をくむことは難しいが,セイモア湾は清流が海の中に流れ込んでいるためポンプのホースを直接つけられると書かれており,一行はここで道光24年(1844)の正月を迎えている。明治26年に西表島を探検した笹森儀助はその著書「南嶋探験」において,舟浮湾を日本最南端の軍港として整備すべきであると述べた。舟浮集落に伝わる民謡「石の屏風ふし」はこの天然の良港をもつ舟浮をたたえたものである(八重山島歌節寄10/歌謡大成Ⅳ)。現在は,舟浮集落の南側の湾内で黒真珠をつくるクロチョウガイの養殖事業が行われている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7241604