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みしま
【みしま】


「おもろさうし」に見える地域称,あるいは汎称とも思われるが,まだ定説を見るに至っていない。伊波普猷は3種の用例があるとし,「第一は巻13の49に『東方(あがるい)の三しま』或は『太陽(てだ)が穴の三しま』とある如く,第一尚氏の根拠地なる佐敷・知念・玉城(たまぐすく)の三間切,俗に云ふ『あがりかた』を指し,第二は巻1の33に『首里杜ころころ(武士等)』の対句に『三しまかずころころ』とある如く,首里三平等の前身を指し,第三は巻3の22に『三しま王にせす掛け襲(おそ)て(三しまを大君こそ領知しての意)』又は同9の『あまみやからおきなわ,嶽でては思はな,しねりやから三しま,森でては思はな』とある如く,全沖縄即ち国頭・中頭・島尻を指してゐる。主として第一は第一尚氏時代のものに,第二は第二尚氏の中央集権時代のものに,第三は島津氏の琉球入りの時のものに,現われてゐる」とする(伊波普猷全集4)。また東恩納寛惇は「あがるいの三しま」について,「伊波君は佐敷・知念・玉城の三間切と解かれたが(沖縄考),その根拠は示してない。自分は大里・知念・佐敷の三間切と解してゐる。真珠湊碑及やらざもり城碑に,警護の部署を定めた中に,『島添大里・知念・佐敷』と一連になって,南風原の宿に続く地理上の関係からであると考えてゐる」といっている(南島風土記)。また,「おもろさうし辞典」は「首里三村のこと。首里の美称。十七世紀以降,首里はみひら(三平等・三比等,などと当てる)とよばれた。真和志・南風・西の三ひらである。オモロの『みしま』を承けたものである。『みしま』については種々の説があるが,オモロにみえる『みしま』はすべて首里のことである」とする。なお,「みしま」は,美称辞「み」+「島」で,われらが自慢のこの立派な島(村落,地域の意)という意の普通名詞かもしれない。関連オモロは17首で,そのうちの1つ巻13-49,No.794には次のように謡われている。一おかちや大ころよ(おかちや大ころよ) おかちやなてころよ(おかちや撫でころよ)又おやのかみやれは(親の神であるので) おなりかみやれは(姉妹神であるので)又おれるかす よせて(天降れするたびに寄せて) あすふかす よせて(神遊びするたびに寄せて)又あかるいのみしま(東方のみしま) なお つほに あてかよう(何の貢物があってか)又てたかあなのみしま(太陽の出る方にあるみしま) なお つくせ あてかよう(何の貢物があってか)「おかちや」は人名といわれているが,未詳。「おなりかみ」は今まで姉妹神とされていたが,最近,妻神が本来の意味であるという考えも出された(南島4)。「てたかあな」は太陽が出現してくる穴の意。対語は「あかるい」なので東方の意と考えることもでき,また,美称辞的用法と考えることもできる。それが「みしま」の解釈にも差異が出てくる原因となっている。大意は,「おかちや」が主宰し,祀る神は,立派な神なので,天降りされるたびに多くの貢物を寄せ集めなさるが,東方の「みしま」には一体どんな貢物があるだろうか,である。神の霊をたたえるとともに,「みしま」の豊かさをたたえたオモロである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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