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やがんな島
【やがんなじま】


沖縄本島北部,本部(もとぶ)半島の東に広がる羽地内海に浮かぶヒトデ形をした小島。方言ではヤガンナジマ・ヤガンナムイ,あるいは単にヤガンナという。今帰仁(なきじん)村湧川に属す。羽地内海に浮かぶ岩礁では最大。島名については,この島によく出現するといわれる妖怪キジムナー(セーマ)のことをヤガンナと呼んだことにちなむともいう。干潮時には湧川のウジュミ岬から歩いて渡れる。一帯は製塩業が行われたところで,やがんな島周辺や湧川の海岸には石垣で囲った塩田跡が残っている。また,墓の島としても知られ,亀甲墓や横穴掘込墓が数多くみられる。それらの墓はノロ墓をはじめ門中墓や個人墓で,地元湧川をはじめ名護市我部(がぶ)の人たちの墓もある。清明祭の頃には先祖を祀る人たちで島はにぎわいを見せ,多くの墓が清掃されて線香の煙がなびく。湧川は乾隆3年(1738)に新設された村落で,それまではこの地に呉我・我部・松田・振慶名(ぶりきな)・桃原(とうばる)などがあった。それらの村落は蔡温の林業政策に伴って移動させられたが,先祖の墓はこの島にある。ほかに島には移動村落の墓ばかりでなく,ムラウチ(村内)の新里家(根屋)の墓,湧川ノロの墓がある。また乾隆3年湧川村が設置されたあとに移住してきた人たちも,やがんな島に墓をつくっている。やがんな島の墓の調査研究は,湧川村の成立,新設村としての湧川,自然条件を利用した小島と墓制,それに村落移動の歴史を知る手掛かりとなるものとして,本格的な研究報告が待たれる。羽地内海には,やがんな島のほかに佐我屋島・ふじち森などの小島が浮かび,内海の美しさをいっそうきわだたせている。特に佐我屋島には20本余りの琉球松がはえ,湖のような内海に浮かぶ様は沖縄の松島といわれるほど美しい風景を描き出している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7241920