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屋良無漏渓
【やらむるち】


沖縄本島中部,嘉手納(かでな)町屋良の比謝(ひじや)川上流にある大池。方言でもヤラムルチという。宝渓(遺老説伝)・漏地(南嶋探験)・茂呂奇(字屋良文化史)とも書く。「南嶋探験」には,モルキ山のふもとにあり,長さ150間・幅80間・深さ10数尋とある。昭和9年の測量では,長さ49間,幅は広い所で21間,深さは最深部で48尺,海抜78尺にある面積715坪の池であった。義本王代の中国宋代淳祐年間(1249~52),大蛇に雨乞のため童女をいけにえにしたという伝説があり(中山伝信録),玉城朝薫の組踊「孝行之巻」のテーマはこれに基づく。「遺老説伝」では,大蛇の声がアガリノウミ(東海)の鳴る音とともに響きわたれば,数日後に風雨が起こるとしている。この池の神は竜宮の神といわれ,昭和46年の旱魃のときにもここで雨乞を行った。伝承では,屋良村のある兄弟が田畑を荒らす大蛇を退治したともいわれる。昔は,年2回王府によって祭祀が執り行われたが,費用がかさむため,屋良村が代行することになり,その代償に,屋良無漏渓から渡具知港に至るまでの間の比謝川の水利権が与えられたという。かつては,その利益を費用として旧暦4月の15日前および6月の24日前の子または丑の日を選んで祭祀を行った。現在は,その前後の休日に祭りが行われる。この池での網の使用と潜水による漁は村の許可を必要とし,漁獲物も漁具所有者・漁師・村人に3等分する慣行であった。池が森にあることで,「薪小に惚りて/久得久山通ゆて/通ゆて珍らさや/屋良ぬむるち(薪がたくさんあるのにひかれ,久得久山に通い,通いつめても珍しいのは,屋良の漏池だ)」と謡われた(ウシデーク・エイサー歌291/歌謡大成Ⅱ)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7241989