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八幡平
【はちまんたい】


二戸郡安代(あしろ)町・岩手郡松尾村・秋田県田沢湖町にまたがる山。標高1,614mの山名であると同時に,山を中心とする高原一帯とその東の源太森・茶臼岳,南の畚(もつこ)岳・藤七温泉,西の蒸ノ湯・焼山一帯を含む総称名として用いられる。山名は,坂上田村麻呂の東夷討伐に由来する。岩手山から八幡平方面にひそんだ蝦夷を平定した田村麻呂は,八幡沼の畔に全軍を集め,先に8本の旗を立て八幡大神を勧請し八幡神社と称して戦勝を祈願した。その神社前に神徳を謝し,去るにおよんで八幡平と命名したという。当山の特色は,火山地形と山頂を彩る豊富な植物,高層湿原,温泉などにある。当山は大深岳~駒ケ岳を結ぶ南北方向の火山列が主軸で,それに東西に走る焼山―茶臼岳―大黒森―屋ノ棟岳―前森山などの火山列が交差する地域。東北軸の火山列は大深岳で二分し,東に延びた尾根は岩手山を中心とする岩手山火山列となる。したがって各種の火山地形がみられる。焼山は円錐形のコニーデ型,茶臼岳・畚岳は粘りのある溶岩が噴出してでき,釣鐘状のトロイデ火山を頂上にのせたアスピトロイデ型のほか,当山地域の多くは,牛の背のような,あるいは楯を伏せたような山容で,アスピーテ型地形をなす。さらに火口に火口湖・火口原湖もあり,泥火山・火山地獄などの火山活動の余塵を残す所も多い。火山地獄の例は秋田県側の玉川・後生掛・藤七・蒸ノ湯など各温泉の源泉地帯で見ることができる。これらの温泉は昭和34年国民保養温泉地に指定された。八幡沼と蟇(ひき)沼は複式火口湖で,八幡沼は東西方向に並んだ5つの小さな火口が同じ水面でつながったものである。冬季,亜寒帯針葉樹を代表するアオモリトドマツには樹氷が生じる。東側斜面に8月上旬まで残雪があり,雪田もある。源太森との間にある窪地にできた八幡平湿原はアオモリトドマツの原生林に囲まれている。その中に神秘をたたえる八幡沼がある。この地域には広大な高層湿原が広がる。源太森東方の黒谷地湿原も美しい。これらの湿原には点在する小さな池塘がみられる。西方の焼山との鞍部のもうせん峠付近にはガンコウラン・コケモモなどがあり,当山と岩手山を結ぶ尾根筋,岩手山頂一帯とともに乾性植物群落をなす。当山の600m以上はブナ林,700~800mはダケカンバの林で,1,000m付近から針葉樹林のアオモリトドマツ,ところによりコメツガやヒメコマツが原生林を形成する。当山の展望台としては源太森・茶臼岳・畚岳が三大展望台である。当山への登山コースは,古くは秋田県側の蒸ノ湯温泉,本県の藤七温泉からが大部分であったが,昭和45年八幡平スキー場前から県境の見返峠を越え秋田県トコロ温泉に至る全長26.7kmの八幡平アスピーテラインが開通した。冬期間は八幡平国定スキー場,春のツアーコースと年中訪れる人が多い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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