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蔵王山
【ざおうさん】


奥羽山脈の南部に位置する火山連峰の総称。山形・宮城両県の県境をなす。最高峰は熊野岳で標高1,841m。昔は不忘山(わすれずのやま)・刈田嶺と称されていたが,天武天皇の時代に僧行願が大和国吉野の金峯山にあった蔵王権現を祀って以来,蔵王山と称するようになったと伝えられる。蔵王山は火山群で,蔵王連峰ともいわれる。蔵王エコーラインを境にして,北蔵王と南蔵王に大別されるが,単に蔵王といった場合は北蔵王を指す。北蔵王は火口湖「御釜」と中央火口丘の五色岳(1,674m)を取り巻いて,主峰の熊野岳・刈田岳(1,759m)・馬の背・名号峰(1,491m)の外輪山からなる。ほかに蔵王温泉(高湯爆裂火口)を取り囲む鳥兜(とりかぶと)山(1,401m)・横倉山(1,152m)・滝山(りゆうざん)(1,362m)の山々が含まれる。これらの山域は,噴火の歴史が新しく承和11年から大正期までくり返している。今日でも,御釜北東部丸山沢および蔵王沢傾城岩付近では水蒸気を噴出している活火山である。南蔵王は,北蔵王よりも古い火山体で,全山山頂まで樹木に覆われている。後烏帽子岳・屏風岳・不忘山と連なる山々は外輪山の一部とされている。また,蔵王山はかつて女人禁制の修験の山としても知られ,「西のおやま」と称された出羽三山に対して,「東のおやま」と称し,厚い信仰を集めていた。当時の登拝路口には蓮蔵寺・三乗院・松尾院など,ゆかりの寺院が残っている。山中には熊野岳・地蔵山・三宝荒神山・ドッコ(独鈷)沼・垢離場・不動滝などの地名が残っており,往時をうかがい知ることができる。神仏分離以降,山岳信仰の霊場としてはすたれたが,可憐なコマクサの咲く山として昭和25年日本観光地百選の山岳部門第1位になった。また,樹氷と雪質からわが国有数のスキー場として施設が整備され,昭和38年には蔵王国定公園の指定を受けた。現上山(かみのやま)市出身の斎藤茂吉は蔵王を「父なる蔵王」と愛し,「みちのくに生れしわれは親しみぬ蔵王のやま鳥海のやま」と詠んでいる。また中腹には角川源義の句碑「蔵王嶺の芋名月となりしかな」がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7601122