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足尾山
【あしおさん】


筑波山塊西列山地のほぼ中央部に位置する山。標高627.5m。東の新治(にいはり)郡八郷町と西の真壁郡真壁町にまたがり,町境および郡境をなす。山体の大部分は黒雲母花崗岩からなり,山麓の真壁町山尾からは柘榴石・緑柱石が産出する。「風土記」新治郡の条に「郡より東五十里に笠間の村あり。越え通ふ道路を葦穂(あしほ)山と称ふ」と見える。かつて山中に石屋があり,油置売命という山賊が住んでいたという。同書にはこの石屋にちなむ俗(くにひと)の歌として「言痛けば をはつせ山の 石城にも 率て籠らなむ な恋ひそ我妹」がある。この歌に見える「をはつせ山」は,大和の泊瀬山を指すとも,葦穂山を大和の泊瀬山にみたてたものともいう。葦穂山は歌枕としても知られ,「筑波嶺に背向(そがい)に見ゆる葦穂山悪しかる咎(とが)もさね見えなくに」(万葉集巻14)をはじめ従二位家隆卿の「さを鹿の角ぐみ初めしあしほ山ほにいでてなく秋は来にけり」(夫木和歌抄),宗尊親王の「あしほ山花さきぬらしつくはねのそかひにみれはかかる白雲」(続群14下)など葦穂山を詠んだ歌も多い。現在山頂には足病を取り除き,足を丈夫にするという足尾神社があり,足尾権現とも称して信仰を集めている。また,修験道の道場としても知られている。南の筑波山との間には湯袋峠・上曽峠,北の加波山との間には一本杉峠があり,真壁地方と柿岡盆地との交通はこれらの峠を経て行われてきた。ハイキングコースは筑波鉄道同線真壁駅から伝正寺・キノコ山をまわるコース,一本杉峠からのコースが代表的。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7601364