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加波山
【かばさん】


筑波山塊西列山地北部に位置する山。西列山地では筑波山に次ぐ高峰で,標高709.0m。東に新治(にいはり)郡八郷町,西に真壁郡真壁町があり,町境・郡界をなす。古くは蒲山と書く。山名は,山頂に加波山信仰で知られる加波山神社があり,神庭すなわちカンバが訛ったものといわれる。南には足尾山・丸山,北には燕山が南北に連なり,真壁地方と柿岡盆地北部や岩間地方との交流は一本杉峠を,岩瀬地方と柿岡盆地は板敷峠を経て行われた。山頂の加波山神社は本宮・中宮・親宮の3社があった。現在も農耕・大漁・火災盗難除・疫病退治の神として関東一円に広い信仰圏をもつ。また別当も3か寺あった。古くから修験道場としても知られる。尾根沿いには小祠・石碑・禅定所が多く,毎年夏に行われる加波山禅定にその名残をとどめている。明治期には自由民権運動の高揚の中で加波山事件の舞台となった。下館藩士の家に生まれた富松正安は明治17年玉水嘉一・保多駒吉などの茨城県出身者と福島事件関係者など16名の志士とともに「自由の公敵たる専制政府を転覆し,而して完全なる自由立憲政体を造出せん」と加波山に立籠った。加波山頂には「自由の魁(さきがけ)」や「一死報国」,「圧制政府顛覆」の旗が翻った。結局挙兵は失敗し,のちに富松ら7名は逮捕され,死刑に処せられた。山頂には現在も挙兵の際に旗を立てた旗立石がある。加波山西麓には石切場があり,結晶の小さい良質の花崗岩(真壁石)が産出される。このため真壁町には石材業が集中し,墓石・石灯籠・建材を主に生産している。また山頂西側にはサンショウウオ谷があり,サンショウウオやサワガニが棲息していたが,今はほとんどみられない。加波山周辺は赤松が多く,スギ・ヒノキの人工林や山頂付近にはミズナラ・アカシデなどの落葉広葉林が分布している。登山コースは八郷町大塚からのルート,一本杉峠まで県道大塚真壁線を自動車で入りそこからの尾根ルート,真壁町華穂からのコースが代表的。西部山麓には以前は水車集落がみられたが,電力の普及で姿を消した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7601403