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白根山
【しらねさん】


県の北西隅,吾妻(あがつま)郡嬬恋(つまごい)村と草津町の境にあり,長野県境近くの火山。活火山の白根山(2,162m)とその南の本白根山(2,176m)からなる双子火山で,総称して草津白根という。山体は本白根山を中心に形成されたもので,有史以降は溶岩の流出をみず,爆裂活動だけである。山体をつくる岩石は主に複輝石安山岩で,石英を含むものもある。この地域の火山の基盤は新第三紀の地層で,北西部では基盤岩が標高2,000m付近まであるのに対し,南東部では700mぐらいまでである。そのため裾野は関東斜面に発達し,東斜面は須川,南斜面は吾妻川,西斜面は万座川で限られる。白根火山の活動は第四紀になって始まり,初期には爆発が盛んで凝灰角礫岩を厚く堆積し,その後大規模に軽石流を噴出した。この噴出後,山頂付近は陥没し,大規模な馬蹄形のカルデラが形成され,本白根山の南東側に広がっていたとみられる。その後は本白根山頂や白根山頂から溶岩流を流出する活動が続き,カルデラを埋め,現在の山体となった。この火山には本白根山頂のお釜や弓池・殺生・万座など数多くの爆裂火口がある。近年の噴火には,明治35年の弓池の北岸の大爆発と,昭和14年の湯釜の爆発がある。白根山頂は荒涼たるはげ山で,直径約1kmにも及ぶ大噴火口があり,その底に3つの火口湖がある。湯釜を中央に,西に涸釜,東に水釜があり,本白根山頂の火口列とともに北東から南西の方向をとっていて,那須火山帯の主軸方向と一致している。湯釜はほぼ円形で,長径約300m・短径約250m,水深30m。湖は濃青色の水面に硫黄の泡を浮かべ,湖底から温泉を湧出し,世界で最も強い酸性湖(pH1.1)である。殺生河原は本白根山の爆発により流出した溶岩で硫気孔がみられる。ガス噴出のみられない東北部の溶岩流の所には国天然記念物のハクサンシャクナゲの群落があり,5月中旬から6月中旬に美しい花を咲かせる。昭和45年に志賀草津有料道路が開通し,白根山頂近くまで自動車で登れるようになった。白根山の東斜面(1,208m)に草津温泉,西斜面(1,760m)に万座温泉があり,山の大部分は上信越高原国立公園内に含まれる。草津白根山は最近まで硫黄の生産地として知られ,山頂の湯釜,浸食谷の入道沢,殺生河原などで採掘されていた。山腹には万座・草津・石津・吾妻の各鉱山があったが閉山した。また,北東斜面の長笹沢の南側(1,200m)に群馬鉄山があった。耕地は斜面の末端部付近や放射谷に断続的に分布するが,耕地率は低い。第2次大戦後,草津町の南西1,100~1,240mの高冷地に白根開拓地,前口・石津集落の間の910~1,100mに仙之入開拓地が設けられ,蔬菜栽培を主体とする高冷地の農業経営が行われている。南西斜面には嬬恋牧場がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7601695