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大馴鹿峠
【おおなじかとうげ】


駒ケ岳山系・鳳凰山系辻山と巨摩(こま)山地千頭星山との鞍部,韮崎(にらさき)市と中巨摩郡芦安村にまたがる峠。標高約1,900m。当峠の南,御勅使(みだい)川支流金山沢を遡行して,北の小武川支流マル沢の谷に出ることができる。峠を南北に,糸魚川静岡構造線が通過していると考えられる。峠と千頭星山との間の急峻狭隘な山稜に笊ケ岳(ざるがたけ)をはじめ2,3の岩峰があり,山容は芦安村方面からは,特異な景観として映る。昔からこの地帯を「おおなじか」と呼び,おそらく「大汝・小汝」の転化したもので,盤神を祀り,狩猟を祈願した痕跡の地名ではないか(柳田国男:神を助けた話,高瀬重雄:古代山岳信仰の史的考察)と思われる。当峠は西郡筋と武川(むかわ)筋を結ぶ最短路として明治期までは使用されたが,今は廃絶してわずかな踏跡しかない。峠が有名になったのは,鳳凰山登山の近道として甘利山―千頭星山―辻山を結ぶ登山路が昭和初年に開かれ,峠の上を通過するようになってからである。シラベ・コメツガ・イワシャジン・シモツケソウ・キンロバイなどの群生が目立ち,植物学的にも注目される地。千頭星山から,峠まで約1時間,峠から辻山の大崩壊の上部を通り,苺平(いちごだいら)に達するのに3時間を要する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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