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姫川
【ひめかわ】


県北西部を流れ,新潟県糸魚川市で日本海に注ぐ1級河川。流長約58km,うち県内は32.918km。北アルプス後立山連峰の五竜岳東方にある青木湖の北方より流出する。新潟県下の下流部を除き,中流から上流までは西の後立山連峰と東の標高1,200~1,500mの山地に挟まれ,姫川渓谷と総称されるような浸食谷をなしている。主な支流には上流より,右岸では谷地(やち)川・峰方沢川・土谷川・中谷川・横川など,左岸では平川・松川・浦川・土沢川などがある。本流の上流に当たる楠川合流点から源流までは,松川や楠川の流出土砂でローカルな浸食基準面をなしているため,堆積作用で小盆地を形成している。しかし合流点以下は浸食作用が盛んでV字形の深い浸食谷をなし,沿岸にもほとんど平坦地はない。つまり姫川は,上流部は河川勾配が緩やかで堆積作用による谷底平地をなし,中流部は深い峡谷で両岸は絶壁が連続する。下流部の新潟県内では小規模な扇状地をなす。本・支流とも土砂の流出が著しく,毎年のように豪雨時には河川の氾濫や山崩れ・地滑りが発生し,姫川の名称とは対照的な荒れ川の様相を呈している。西側の北アルプスから流出する松川や楠川・浦川は花崗岩の砂礫を大量に押し出し,姫川本流の流路を東の山麓へ押しつけたり,せき止めることがしばしばある。一方東方の山地は日本の常襲地滑り地の一つで,頁岩・集塊岩類を押し出す。峻険な地形の上に,冬季は積雪数mにも達する豪雪地でもある。このため,昭和40年頃までは県下でも代表的な農山村で,人口の流出も激しかった。しかし昭和40年代に入ると,上流部の北安曇(きたあずみ)郡白馬村でスキー場の開発が進み,県下の代表的山岳スキー地域を形成し,一方北アルプスの名峰白馬岳登山のブームもあって,姫川渓谷の上流部は第2の軽井沢を目指して観光地化が著しい。姫川沿いは日本海側から松本盆地へ通ずる最短通路で,中世・近世を通じ両地域の物資交流に利用されてきた。なかでも塩は松本方面への最も重要な物資で,このため姫川沿いの通路には現在も塩を運んだ牛宿やボッカの宿,道標・馬頭観世音などが存在し,塩の道と呼ばれ,訪れる人が多い。この歴史上の塩の道は,現在の国道148号と重なる所が多い。姫川の名称は,古代古志国(越国)の統治者で,当川の河口に住んでいたという奴奈川姫にちなむという。新潟県内にある支流の小滝川にはヒスイの産地があり,古代河口に流れたヒスイから上流へとこれを求め,最後は出雲族が松本盆地に定住するようになったともいわれる。姫川の本・支流には温泉も多い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7603698