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潤井川
【うるいがわ】


古名を古家川という(地名辞書)。富士山西斜面に発達する大沢に源を発し,田子の浦港で駿河(するが)湾に注ぐ。流長25.9km。「万葉集」に「秋柏潤和川辺の篠の芽に人にはしのへ君にあへなく」,「朝柏閏八川辺の篠の芽の偲ひて寝れば夢に見えけり」の2首があり,前者は柿本人麻呂の作といわれている。この潤和川および閏八川が潤井川という(地名辞書)。もっとも,潤和川・閏八川については畿内説・上総説・播磨説などがあり,駿河の潤井川と確定しているわけではないが,有力な説であることは明らかである(万葉集駿遠豆)。「駿河記」は「古家川の転にや」とし,「源は淀師青見の阿良口辺より湧水あり。或は北山辺の用水等流て,大宮浅間の御手洗川合流して,滝戸に至て磐石かさなりて山の如し。岩間に落る白浪は井堰にかゝる雪かと疑ふ。此滝の下を凡夫川と云」と記している。天文21年8月16日付春長宛今川義元の朱印状には宇流井河と見える(宮崎氏文書/県史料2)。一説に潤井川はもと大宮の星山を流れて富士川に入っていたのを,加島諸村の開発を図るため,野中地内において河道を改修して現在の形に改めたというが,加島用水のためという点には疑問もある(鷹岡町の史蹟と伝説)。現在,上流部の大沢は富士山の典型的な放射谷で多量の砂礫を供給し,裾野に広大な扇状地を形成。流下土砂量が多いため災害も多く,扇状地内に土砂の流出を防ぐ砂防堰堤が構築されている。富士宮市の上井出(かみいで)・北山を経て,富士山南西麓と羽鮒(はぶな)丘陵との間の凹地を南流,淀師(よどし),富士浅間神社内の湧玉(わくたま)の池の豊富な湧水地帯で流量を増す。富士宮市街地南西部で南東流し,星山丘陵と富士山南西麓との凹地を流れる。中流部には新富士火山の入山瀬(いりやませ)溶岩流により形成された堰止湖跡や溶岩流上を浸食した急流部が存在。富士宮市黒田から洪水調節機能を持つ星山放水路が造られ分流し,富士川に注ぐ。富士市入山瀬を過ぎると富士川扇状地と富士山との間を流れる。羽鮒・星山丘陵との断層崖を利用しての水力発電,中・下流部では農業・工業用水として多方面に利用される。明治23年,この川の水を利用して入山瀬に進出した富士製紙は岳南地域の製紙工業の基礎となった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7603940