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乙川
【おとがわ】


南設楽(みなみしたら)郡作手(つくで)村と額田(ぬかた)郡額田町の境にある巴山の西斜面を源に,岡崎市茅原沢町で男(おと)川を左岸より合わせ,ほぼ西流して同市六名町で矢作(やはぎ)川に合流する。1級河川。流長38km・流域面積258km(^2)。年間総流出量2億5,000万m(^3)前後で,矢作川水系では巴川に次ぐ2番目の大支流。日本武尊が東征をした時,同市吹矢町付近の河原で皇子が誕生し,尊は川瀬の音にちなんで乙見(音見・音水)皇子と名付けたという(岡崎市史)。往古は広々とした川沿いの礫州に屏風岩・烏帽子岩・剃石岩などの奇岩が立ち並んでいたという。矢作川との合流点の手前右岸に岡崎市の主要市街地が立地し,この付近では菅生川・大平川とも呼ばれる。かつての乙川は,殿橋下流の久後崎辺りでほぼ直角に流れを南に転じ,明大寺の諸神神社から現岡崎市体育館方面に向かっていた。当時,北岸の岡崎城のある丘と南岸の三島神社や六名の集落のある丘は一続きだったので,流れは岡崎城の建つ竜頭山のすそをえぐるように南に曲がり,六ツ美南部で矢作川と合流していた。康暦元年六名堤築堤の際,城と三島神社のある台地を開削して菅生川を矢作川の方に付け替えた。この流路変更によって岡崎城は川を堀とする堅固な防衛態勢がとれる地の利を得た。江戸期には「五万石でも岡崎さまはお城下まで舟がつく」と歌われ,菅生川にも帆掛船が満性寺あたりまで往来するようになった。茅原沢での合流点近くに岩盤やくぼみの多い美しい渓谷がある。そのくぼみの中に水の干上がらない水たまりがあり,天恵水といわれる。流域はホタルの里としても知られ,乙川・竜泉寺川・山綱川水系の源氏蛍は国の天然記念物。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7604126