安居辻松峠
【あごのつじまつとうげ】

西牟婁(にしむろ)郡白浜町と同郡日置川(ひきがわ)町との境にある峠。標高約390m，富田(とんだ)川水系と日置川水系の分水嶺に位置する。田辺市から朝来(あつそ)（西牟婁郡上富田町）を経て熊野に至る大辺路(おおへち)街道が当峠を通る。かつては茶屋があり，尾根伝いの平坦な道を茶屋の段といい，小字名にその名残をとどめている。白浜町富田字高瀬から峠までの約4.8kmを富田坂，峠から日置川町字安居までの約6.5kmを安居坂という。「続風土記」には「坂道石高く路険にして，下辺地街道の内坂道険にして大なるはこの坂を第一とす」とあり，非常な難所であった。大正の初め，大辺路街道の改修に当たり当峠から南側海岸沿いに県道が新設されたため，さびれてしまい，現在は山仕事をする人が利用する程度である。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7605395