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大峠
【おおとうげ】


有田(ありだ)郡広川町と日高郡川辺町の境にある峠。標高400m。当峠には広川町上津木落合から室川峠への道(県道三百瀬下津木線)を少し上り,室河集落を過ぎ,この付近から南に山道を折れる。この山道が峠道となり,白馬山脈を横断して日高郡川辺町に通じる。有田の人々は峠道を小山越えと呼び,日高地方では小山の大峠の名で親しまれる。小山は峠の東寄りにある標高458mの山。小山には古来小山権現社があり,祭神は蔵王権現といって,吉野大峰山の分神といわれる。また,別当寺として高山寺もあり,信者も多く,小山参りでたいへんにぎわった。このように小山権現社や高山寺への参拝に利用されたところから,自然に小山越えとか小山の大峠といわれるようになったようである。峠名は,広川町・川辺町のいずれから峠を越えるにしても,白馬山脈の長く険しい山道を歩いて,やっとたどりつくことにちなむと思われる。峠は小山権現社や高山寺参拝に利用されたばかりでなく,室川峠とともに,有田・日高両地方を結ぶ商用道路として,行商人がよく利用したのである。しかし明治に入って旧熊野街道の大改修による上津木落合から中村を経て由良町原谷へ通じる県道の完成,さらに明治末期の権現社の紀道明治社への合祀,また,同時に高山寺の廃寺化等によって,参拝信者もなくなり,次第に衰退した。現在,小山にはわずかに往時をしのぶ石塔や礎石等が残るにすぎない。こうして長い間商用道路として,また参拝道路として利用されてきた古道も廃道化の一途をたどっている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7605424