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大塔山
【おおとうざん】


大高山ともいう。東牟婁(ひがしむろ)郡本宮(ほんぐう)町と西牟婁郡大塔村にまたがる大塔山地の主峰。標高1,112m。山麓は広く,谷壁は急峻,谷密度が高く,密林に覆われた広い無住居地域である。「続風土記」には,「古より今に至りて其の頂を極めたるものなけれは,その高さを測る事あたはす……山麓を去る十里の外ならされは,その頂を見る事を得す」とあり,昔は魔性のすむ山として恐れられ,登る者もほとんどなかったという。西の谷の前川と,北の谷の安川は,合流して日置(ひき)川となり,東の谷の大塔川と和田川は熊野川に合流し,南の谷は古座(こざ)川の上流となる。いずれも渓谷をなし,細尾滝(安川)・大杉滝・逢合滝・黒蔵滝(大塔川)など滝が多い。山名の由来について「続風土記」は,「山頂二峰をなす,北にあるを一の森と称し,南にあるを二の森という,大塔は大多和の義にして,二峰の間大なる多和をなすを以て,大多和の峰と言ひしか転したるなり」と述べている。江戸後期に山麓の一部が伐採されたようだが,原生林が残されたため,生物学上珍しい植物・昆虫が生息している。1,000m以上の山頂付近には,10数haのブナ林が茂り,北斜面には高野マキが自生し,800m以上は,モミ・ツガの落葉樹林帯となっている。登山路は大塔川・和田川・古座川の上流部から開かれており,頂上からは熊野三千峰が一望できる。地質は古第三紀の牟婁層群に属し,多雨地帯にあるため山肌の浸食が進み,壮年期の山容を示す。紀州のチベットと称されるように,現在もまだ深山幽谷の秘境である。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7605425