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富峠
【とみだわ】


倉敷市玉島富と小田郡矢掛町横谷を結ぶ峠。標高120m。小田川沿いの旧山陽道と瀬戸内海沿岸の間に横たわる遥照山・阿部山塊には,富峠をはじめ,鴨方町地頭と山田を結ぶ地蔵峠,鴨方町杉谷と山田を結ぶ杉峠などがある。富峠は玉島港と矢掛宿を結ぶ重要な交通路であった。矢掛からは米・薪・松葉など野山の産物と弥高鉱山の銅鉱が,玉島からは塩・油粕・魚などが運ばれた。特に,富峠の北にある弥高鉱山は明治10年三菱系の資本で採鉱が本格化し,昭和13年には約100人の鉱夫がおり,大八車に載せた鉱石を富峠を越えて玉島港に運び,ここから日比精錬所に送られた。峠越えの旧道は,「ひじ曲がり」といわれる急カーブを曲がりくねりながらの難所であった。大正4年に新道が開削され道幅が広くなり,馬車の通行が可能となった。さらに,昭和30年には富トンネル(隧道)が完成して峠道はその歴史を一新した。富峠から流れ下る大渡川は急流で,麓の横谷に扇状地を形成しており,かつては多くの水車小屋があり,製粉・精米が盛んであった。また,明治19年から手延べ素麺の生産が行われ,現在も続けられている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7605938