鳥居峠
【とりいたわ】

鳥居ケ乢ともいう。真庭郡湯原町藤森と同郡川上村郷原を結ぶ峠。標高約610ｍ。愛宕山北東の鞍部にあり，峠からは遠く大山方面への展望が開ける。藤森・鳥居峠から郷原・延助へと続くこの道筋は近世の大山往来にあたり，備前地方から大山牛馬市へ通う博労や大山詣りの善男善女でにぎわった。峠名は，かつて大智明権現大山寺四面の鳥居のうち南面の鳥居が建てられていたことに由来し，「作陽誌」には以前郡人が華表（鳥居）を建てたが存しないことや，ここが大山遥拝の地であったことが記されている。峠には寛政５年松尾芭蕉百回忌を記念して建てられた雲雀塚がある。文政４年に建立され，倒壊していた鳥居は，近年２本の石柱が復元された。この峠道は明治18年全線が改修されたが，東方にある犬畑峠越えなどが整備され，主要道としての地位を失った。昭和９年の風水害で通行不能となり一般道としての役割は消えたが，近年林道として全線が完成した。現在着工中の中国横断自動車道はこの鳥居峠をトンネルで通過する予定である。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7605942