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鮎喰川
【あくいがわ】


名西(みようざい)郡神山町を縦断し,徳島市西方を北東流する川。吉野川右岸有数の支流。延長49.0km,流域面積198.7km(^2)。神山町奥屋敷を源流とし,神山町中部をいわゆる御荷鉾(みかぶ)構造線に沿い東流し,同町中津から直角に北に転じ,のち北東流して徳島市不動東町で吉野川に合流する。往時下流は安来川あるいは曽根川と呼ばれ,一ノ宮町北方から直流して徳島市眉山(びざん)山麓を東流していたが,天正13年蜂須賀家政(蓬庵)が徳島(渭津(いのつ))城造営の際に,西名東(にしみようどう)村に大堤を築いてこれをせき止め,今日のように流域を変更した(阿波名勝案内)。蓬庵堤の名や,現在の田宮川は元鮎喰川の本流という口碑が残っている(名東郡史)。往時の鮎喰川は,徳島市延命と僧都(そうず)淵を結ぶ線あたりから,時により国府町から佐古にかけて流路を変えていたものと思われる。開削された用水として以西用水(天正17年以前)・袋井用水(元禄年間)・入田(にゆうた)用水(文化5年)・名西用水(天保11年)などがある(徳島市史)。鮎喰川の上流は,大粟山の渓流を集めて上山(かみやま)を流れているので,大粟川・上山川の別名がある(名西郡誌)。流域は地質学上三波川(さんばがわ)帯と秩父(ちちぶ)帯に分けられ,共に全国的に著名な地滑り地帯である。鮎喰川に沿う低地が古代からの居住地となり,また剣山と東部沿岸平野を結ぶ重要な通路であったことは,神山町下分での平形銅剣出土,中流・下流にある上一宮大粟神社・一宮神社・一宮城跡の存在などからうかがわれる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7606390