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海部川
【かいふがわ】


海部郡海南町・海部町を流れ,太平洋に注ぐ県南第一の河川。延長36.3km,流域面積154.6km(^2)。高知県境の貧田丸に発し,東北東に流れたのち,海南町皆ノ瀬(かいのせ)で南に転じ,下流は海南・海部両町の境をなして海に注ぐ。相川・母川・小川谷などの支流がある。本支流とも中生界四万十(しまんと)層群の地質構造に支配され,東西方向は断層線あるいは泥質岩の走向にほぼ一致する。河岸段丘は小規模で,海南町若松および海部町富田にやや広く分布する。河口近くの沖積平野には,本流の堆積物のため谷の上流方向は逆傾斜しているところがある。河口左岸には大里のれき浜と砂丘が広がる。海部川のコースは藩政期から昭和初期にかけて,那賀奥と他地域を結ぶ幹線で,皆ノ瀬と河口の鞆奥(ともおく)の間には,高瀬舟が1日航程で上下した。明治初期の荷船数は少なくとも100隻には達したといわれ,終点の皆ノ瀬には,旅館や飲食店が営業するほどであった。舟の積荷は上りは米・酒・塩,下りは木炭・茶・シュロ皮が主なものである。また流域の山林からは木材が,板筏や管流しによって流送された。しかし,大正7年に海部川線の車道が開通して,大八車や馬車が高瀬舟にとって代わり,さらに大正11年に那賀川沿いに平谷(ひらだに)まで車道が通じるに至って,幹線としての機能を喪失することとなった。現在海部川沿いの道は国道193号に昇格しているが,未改修区間が長く,幹線には程遠い有様である。流域の観光地として上流の支流王余魚(かれい)谷の轟ノ滝が著名である。また母川は,国天然記念物のオオウナギ生息地である。このほか,海部川水系はアマゴ(アメゴ)の多い川として遊漁者に知られている。中流は荒廃河川の名残をとどめる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7606438