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高根山
【こうねやま】


勝浦郡上勝町と名西(みようざい)郡神山町の境にある山。剣山から高城山を経て中津峰山へと,本県の中央を東西に走る山系にあり,四国霊場に札所のある焼山寺山と鮎喰(あくい)川を挟んで南北に対峙する。焼山寺山の南6km,雲早山の北東4kmの位置にある。頂上は1,312mを示している。1.8km南西に寄って三角点1,292.5mがある。「阿波志」には,「高根山,神領村にあり。山勢高峻にして上ること一里,草庵あり観音像を安置す。源成助つかうる所と云う」とある。「阿波名勝案内」には,「高根山は神領村の西南隅にそびえ,名西郡中第一の高峰なり,麓より登ること一里二十二丁。その頂を旭丸と云い,眺望佳絶なり。廃藩以前までは氷木屋ありて堆雪を坑中に蔵め,毎年盛夏の候,藩主に献上するを常とす。山腹に高根集落あり,多田(源)満仲の息女円覚尼の開基と称する悲願寺は今なお満仲の位牌をまつれり。堂の後より清水わき出し,これを灌漑の用に供し,さらに流れて雨乞い瀑布(滝)の源流となる」と書いている。悲願寺は古くは長満寺と称していた。源満仲は平安中期の武将で,清和源氏の基礎をなした人物であるが,その娘(幼名美女丸)がなぜ阿波に来たのかは不明である。「灯火録」にも,「名西郡上山村に高根山とて焼山寺山に相対するほどの高山あり。この山の峡崎(岩場)にさし出たる数丈の岩,自然と笑子(恵比須)の神像の恰好なり。離れて(見れば)彫刻せるかと思うばかりなり。常ににこにこと笑ひ給うごとく見ゆる故,笑い岩ともいう。高根山は岩山にて様々の奇形妙景いふばかりなき絶景の所なり」とある。悲願寺は高根の観音さんと呼ばれ,養蚕の守り神であった。現存し,宿泊も可能である。登山道は神山町寄井から雨乞ノ滝を見物して悲願寺を経由するのが約3時間。雨乞ノ滝までは梅林があり,早春は梅見でにぎわい,売店も出る。現在はスーパー林道が頂上のすぐ下方の南北を通っている。車を利用すれば約15分で頂上に着く。中部山渓県立自然公園に含まれる。古くは神山町左右山から寄井の間の裏山を高根山と総称し,その最高峰1,312mピークを旭ノ丸と呼び,頂上から東方2km地点にある1,249mのピークを柴小屋山と呼ぶ。ともに神山町と上勝町の境界線上にある。地質上は秩父帯に属し,稜線の林道上には泥岩やチャートがみられ,所々に凝灰岩が露出している。頂上および柴小屋山には原生林が残り,ブナ・シデ・ヒメシャラ・ハクウンボク・サワグルミ・タンナサワフタギ・コミネカエデなどの樹木が茂り,草本ではヒメコウモリ・カタクリ・モミジガサ・シンジュギク・コゴメグサなどが見られる。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7606471