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中津峰山
【なかつみねさん】


徳島市と勝浦郡勝浦町の境にある山。剣山連峰の一ノ森から東方に連なる主山稜の最東部に当たる。標高773.0m。日峰山・津峰山とともに阿波三峰と称せられ,海の守護神として信仰されている。三山に灯す火は暗夜でも海から望まれ,その相互の関係から船の位置を知るといわれる。「阿波志」に,「中津峰,宮井村にあり,城府を距たること三里。坂道千八十歩にして,左右に花桜列をなす。西は八多山に連らなり,東は海門を望む。その峰森邃にして,前に大悲閣あり,その下を如意輪寺となす」とある。如意輪寺は真言宗高野派の寺で,北東中腹にある古刹である。如意輪寺の観音像は寄木造りの右脚立膝座像で,鎌倉期の作品とされ,国重文である。「灯火録」に「中津峰の上を長者ケ原といい,屋敷跡あり。馬場・井戸跡も今に残る」とあり,頂上から100mほど西に寄った所に石垣が現存し,清冽な水も流れている。長者が米糠を捨てたので糠ケ原とも呼ばれるという。南側の中腹に星ノ岩屋がある。「阿波志」に,「星窟,星谷山中にあり,古木葱翠にして,石みな透徹鏡の如し,その中に瀑布(滝)あり高さ数丈。右に石崖あり高さ五丈許り,俗に伝う釈空海(弘法大師)星をここに祈る」と,また「山頂に三十八所祠あり,里民ここに雨乞す」ともされている天津神社がある。頂上には石垣の防風壁があり,38社が祀られている。山頂の西方約1.5km付近は婆羅尾(ばらお)と呼ばれる広い峠で,この峠と中津峰山の間の地域は最近森林公園となり,キャンプ地などの諸施設・車道の建設が行われている。峠の北斜面には五滝がある。中津峰山から西方の連山を八多山と総称し,藩主の狩場であった。寛文元年3月6日から12日まで行われた蜂須賀光隆の鹿狩りでは,獲物362頭,従者3,600人であった(阿淡年表秘録)という。地質は秩父帯に属す。山頂付近の植物はオンツツジ・ヤマツツジ・シロモジ・エゴノキ・カラマツ・コナラ・アセビ・ヒサカキなどが目立つ。登山道は如意輪寺までは車道があり,ここから約1時間で頂上に達する。婆羅尾峠東より山頂の直下までの車道もある。徳島市多家良(たから)町から波羅尾峠を経て,勝浦町中山を経て星谷に車で通行できる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7606530