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明神山
【みょうじんやま】


阿南市と海部郡由岐(ゆき)町の境界にある山。標高441.6m。南は太平洋に面する急傾斜で,海岸線は浸食されて断崖をなす。山頂からは360度の展望が可能で,藩政期椿泊を根城に活躍した森水軍の番所があったと伝える。北斜面は緩やかで,山麓は耕作地をなす。「阿波志」には,「峰神社,坂道三千歩,土(地)人,此に雨を乞ふ」とある。山頂には石囲いがあり,峰神社の奥の院が祀られている。由岐町側では山を海神として,また阿南市側は農耕神として信仰の対象としている。山頂付近にはNHK・四国放送のテレビ中継所がある。南麓の阿部(あぶ)・伊座利は陸の孤島といわれた地であったが,昭和32年に明神山の東方の伊座利峠を車道の主要地方道由岐大西線が貫通し,阿南市中央から1時間足らずで行けるようになった。海岸ではアワビ・ウニ・カニが採れ,こうした海産物は平安期にすでに,国の大嘗祭に献上されていたことが「延喜式」に記されている。江戸期には乾アワビが租税として納められていた(阿波志)。「阿淡年表秘録」には,藩主の「海部郡阿部山御鹿狩」の記事が散見する。南麓には,キャンプ場・フィールドアスレチックなどの設備のある青少年旅行村,イノブタ(猪と豚とを交配させた食肉獣)牧場やイチゴ園のある観光施設,四国霊場番外の御水大師などがある。地質は四万十帯に属す。植生はウバメガシが優占し,南斜面では太平洋からの強風により,すべての樹木が山肌に傾斜している。山頂付近にはクロザサが一面に覆っている。ツリガネニンジン・シロヨメナ・ハルリンドウ・シハイスミレなどが見られる。登山道は阿南市福井町の働々,由岐町阿部など昔からの道があるが,頂上直下まで車道が通じている。室戸阿南海岸国定公園のうち。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7606574