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矢筈山
【やはずやま】


地元では「やはずさん」と呼ぶ。祖谷(いや)川の北部に連なる連峰(中津山~黒笠山)の最高峰。美馬郡一宇村と三好郡東祖谷山(ひがしいややま)村の境にある山。標高1,848.5m。県下第5位の高峰である。三嶺から祖谷川を挟んで北方約10km,落合峠東方約2.5kmの地点にある。平野から眺望が利かないためか,高さの割に文献上の紹介は少ない。山名の由来については,「県神社誌」に「(石堂)山の南方に矢筈山の高峰がそびえ,この(石堂)山の奥の院と呼んでいる。屋島の戦に,平家の将能登守教経の放った矢がこの山の頂上に飛んで来たところから矢筈山という」とある。「一宇村誌」にも,「本村第一の高山にして山姿秀麗なり。石堂山より約半里南方に聳立せり」とあり,北方の山岳信仰で知られる石堂山が著名度が高い一方,この方は目立たない。山頂は3つのピークからなる。「新編美馬郡郷土誌」によれば,「矢筈山は,県内第二の高山でもある。千八百米付近から上方にはダケカンバの疎林があり,頂上の草原には盛夏の候シコクフウロ,クガイソウ等が満開し御花畑が現出する。絶頂西辺の肩に矢筈石がある。ほぼ四角柱をなし高さ七米ばかり北面より見るとM字形(矢筈)となる。山名もこの石より起こったものと考えられる」とある。古くは矢筈山を中心に石堂山・黒笠山などを総称して筑ガ峰と称していた。原生林は矢筈山烏帽子山風景林に指定されており,ウラジロモミの純林,ブナ原生林,ハクサンシャクナゲの南限地など植物学的にも注目される。頂上付近は笹に覆われるが,露呈した岩石は点紋のある塩基性片岩である。登山道は落合峠から東のピークに登って稜線をたどるのが最も早く,約2時間30分かかる。石堂山からも,黒笠山からも縦走可能であるが,黒笠山からのルートはやぶを分ける道のりとなる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7606586