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石墨山
【いしずみやま】


上浮穴(かみうけな)郡面河(おもご)村と久万(くま)町の境にある山。標高1,456m。松山市の南に連なる皿ケ嶺(さらがみね)連峰の中の最高峰。山頂は稜線より南にはみ出しているので,松山平野からは山頂の一部しか望めないが,南麓の直瀬(なおせ)・杣野(そまの)からはその全貌を眺められる。山容は全般に壮年期の険しい地貌を呈する。この山の8合目あたりまでは屋根葺き用の茅場で,南斜面は杣野の前組が,西斜面は直瀬の仲組が利用していた。昭和30年頃までは春彼岸頃,集落総出で山焼きが行われていたが,草ぶき屋根の減少とともに茅場は消滅し,人工造林化された。この山には修験者赤鬼法性院にまつわる伝説がある。怪力無双の法性院は,石墨山で大蛇に襲われた兎を助けてやったことから,夜大蛇の襲撃をうけ,体に巻きついた大蛇を出刃でずたずたに切り捨てて難を逃れる。法性院は老年になり死期を覚って,石墨山の8合目の岩陰で入定したという。現在も山には彼の遺骨を納めると伝える納骨堂があり,麓の本村(ほんむら)の石墨神社に彼を祀る。当山は神聖視され,女人禁制をしき,旱害の年には雨乞いなどがされたが,その習慣も第2次大戦後は廃れてしまった。皿ケ嶺連峰県立自然公園に属し,登山道は北の稜線に1本通ずるのみである。山頂からは石鎚連峰が指呼の間に望まれる。




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「角川日本地名大辞典」
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